精神病理3:幻覚・全5巻

幻覚(全5巻)


アンリ・エー著
宮本忠雄・小見山実監訳

■A5判上製
■分売可


 アンリ・エー(1900−1977)は20世紀を代表するフランスの精神医学者である。彼はサン・タンヌ病院を経て,長くボンヌヴァル精神病院院長の職にあったが,その間世界精神医学会の創設に貢献し,事務総長も務め,また雑誌「精神医学の進歩」の編集主幹としても活躍した。
 彼の提唱した〈器質力動論〉は精神医学の主要な理論の一つに数えられよう。それは,ジャクソンの思想を精神医学へ適用し,神経と精神の層理論を説くものであるが,ジャネ,フロイト,ブロイラーの理論を継承し,さらにはゲシュタルト心理学や現象学的精神病理学も摂取して,独自の理論を形成している。この理論にみられる彼の該博な知識,関心の広さと探さ,粘り強い思考に,われわれは驚くばかりである。さて今回,全5巻で翻訳刊行される『幻覚』(1973)は,彼の生涯に及んだ幻覚研究を集大成した大著である。本書で,彼は幻覚を病理的現象としてとらえているが,要素主義的・機械論的理論へと還元することなく,また心因論とは反対の立場に立っている。そして幻覚を心的有機体の組織解体によって出現するものとして,妄想性幻覚群と幻覚エイドリーの2群に分けていることは注目されよう。この幻覚の理論モデルはまさに器貿力動論の理論モデルと一致し,器質力動的幻覚論と呼ぶにふさわしい。
 いうまでもなく幻覚は,妄想とならんで精神医学における重要かつ基本的なテーマであるが,これまで幻覚に関する包括的な研究は以外と少ない。本書ほど浩瀚で独創的な幻覚論は他に類をみないもので,幻覚研究の基礎となる文献であることはまちがいない。その翻訳が待たれたが,今回実現をみたのは,東京医科歯科大学,自治医科大学関係の精神病理学徒の,長年に及ぶ努力の成果である。今日われわれの関心は精神障害の操作的な診断や分類に強く傾いているようだが,幻覚というような古典的なテーマも精神病理学的にまだ十分解明されていないのである。

Ⅰ 幻覚総論(POD版)

影山任佐,古川冬彦訳

序言
対象を欠く知覚の客体化と幻覚論の「図解」の諸問題
幻覚現象の分析
知覚と幻覚群についての一般的問題
幻覚群に関する諸見解の発展
幻覚症性エイドリー
妄想性幻覚群
妄想性幻覚群の臨床的諸様態

A5判/p.358/本体8,000円+税 /ISBN978-4-7724-9030-6〔2017〕

Ⅱ 精神病・神経症の幻覚(POD版)

小見山実,新谷昌宏訳

急性精神病の幻覚
慢性妄想精神病の幻覚(1)
慢性妄想精神病の幻覚(2)
神経症の幻覚

A5判/p.338/本体8,000円+税 /ISBN978-4-7724-9031-3〔2017〕

Ⅲ「線型」病態発生論(POD版)

古川冬彦,阿部隆明訳

総論
機械論モデル
精神力動論モデル

A5判/p.290/本体8,000円+税 /ISBN978-4-7724-9032-0〔2017〕

Ⅳ 器質・力動論1(POD版)

関忠盛,阿部惠一郎,中谷陽二,吉沢順訳

抗幻覚的心的組織化の構築的モデル
幻覚現象のアノミー構造(1)(幻覚の性質と定義)
幻覚の自然な分類
A5判/p.256/本体8,000円+税 /ISBN978-4-7724-9033-7〔2017〕

Ⅴ 器質・力動論2

影山任佐,阿部隆明訳

幻覚現象の陰性的条件(幻覚因的過程)
幻覚群の治療
エーを読む 蘇るアンリ・エー―器質・力動論の現代的意義と展望―影山任佐
はじめに
第一部 エーの生涯
第二部 器質・力動論
第三部 エーの「デリール」と「デリール性幻覚群」をめぐって
おわりに
謝  辞

資料1 古典紹介と解説ファルレの古器質・力動論
資料2 エー H : Eugenブロイラーの考想(一九四〇)影山任佐(訳)
資料3 ヒューリングス・ジャクソンの諸原理からオイゲン・ブロイラーの精神病理学へ(一九四六)影山任佐(訳)
資料4 『心理学事典』(一九八〇、一九八三)におけるエーの器質・力動論 影山任佐(訳)
A5判/p.600/本体8,500円+税 /ISBN978-4-7724-1532-3〔2017〕