N・シュワルツ‐サラント著/織田尚生監訳

境界例と想像力
現代分析心理学の技法

A5判/326頁/定価(本体4,800円+税) 1997年11月刊


ISBN978-4-7724-0562-1

 境界性人格障害に現代ユング心理学の光を当てた労作。
 境界例患者の病理とその心理療法については,精神分析学的立場から多くの業績が蓄積されている。本書において著者は,ウィニコット,コフート,クライン,マーラー,マスターソンといった精神分析的研究を,自身の臨床経験に照らしつつ,ユング心理学の概念を通して徹底的に洗い直した。
 そして発達的,対象関係論的なアプローチだけでは,混乱,分裂,抑うつ,易変性などの問題に満ちた境界例患者の心を癒すことは困難であるとして,治療者と患者の相互作用に想像力を用いて働きかけることの重要性を主張する。さまざまな事例の中で自らの内面の動きを包み隠さず赤裸々に語りながら,そこに生起するダイナミズムをユングの錬金術の研究やローマ時代の寓話の研究に重ねあわせて,魂の変容と癒しがどのようにもたらされるかを詳述している。
 転移逆転移,投影性同一視,分離個体化など,これまで精神分析用語で語られてきた概念に対して,中間領域での結合体験,想像力による視覚など元型的な癒しへの道を克明に検討し,その臨床的意味と心理療法的技法を明らかにした本書は,ユング派のみならずあらゆる立場の心理療法家に新たな視点をもたらす,極めて説得力のある臨床的英知が詰め込まれたものである。

おもな目次

    序論
    第1章 境界性人格を体験する
    第2章 自己愛性人格と境界性人格との比較
    第3章 神としての人:現実歪曲と自己
    第4章 投影性同一視の元型的基礎
    第5章 相互作用の領域における,サトルボディと想像上の経験
    第6章 想像力,そして狂気を癒す力
    第7章 『黄金のろば』にみられる受難と救済