牧原 浩著

精神分裂病者と辿る世界
個人療法,家族研究,家族療法を通して

A5判/290頁/定価(本体4,800円+税) 1998年3月刊


ISBN978-4-7724-0570-6

 分裂病者への精神療法はどのようにして可能になるのか。著者は,ある分裂病少女との出会いから一貫して,患者の心に深く沈潜しそこに生じる治療者の始源的で微妙な感性体験をも徹底的に思索の対象とすることによって,その問いに答えようとする。
 同時に家族という土俵に生身で飛び込み,その中で体得された患者家族のさまざまな様態は,日大グループの実証的家族研究の一環として数々の成果をもたらしたが,患者と家族の相互作用やコミュニケーションに注目する著者の臨床的姿勢は自ずと家族療法へと導かれることになる。ミラノ派をモデルに行なわれた著者らの経験は,わが国で数少ない本格的な分裂病に対する家族療法の試みとして貴重な知見を数多く残したが,それらが本書に集成されている。
 しかし,著者の目指すものは,分裂病の個人治療から家族研究・家族療法へといたる直線的なものでないことは,巻末を飾る書き下ろし論文を見れば明らかであろう。そこでは病者の人間的回復をもたらす要因としての治療者の「技術」と「人間性」を,著者が師と仰ぐ井村恒郎と小川信男の実践の中に跡づけながら,その統合を目指した真摯な探求と苦闘の歴史が克明に披瀝されている。
 本書に収められた諸論文は,精神疾患への心理的接近を考える時,欠くことのできない珠玉の論考ばかりである。

おもな目次

     序 下坂幸三

    第1部

      精神分裂病の精神療法
      分裂病の治療過程と家族背景
      分裂病における治療関係の推移と治療者のありかた
      出会いと自立
      追記 小川信男先生を悼む

    第2部 精神分裂病の家族研究

      一分裂病の家族の生態
      分裂病家族の父─母─患者の相互関係
      精神分裂病の家族におけるコミュニケーション
      追記 ベイトソンと恩師井村恒郎先生を偲ぶ

    第3部 精神分裂病の家族療法

      分裂病家族へのアプローチ──主として患者と家族の関係をめぐって──
      家族療法への招待(1)
      家族療法への招待(2)
      一分裂病者に対する家族療法の試み──二,三の介入に関する考察──
      すりかえ:インターアクションの視点から
      追記 ミラノ派について

    第4部 サイコセラピー論考

      サイコセラピー論考──変化の現象論──