序文より(抜粋)

 本書は,都立松沢病院,東京精神病院協会,東京精神科神経科診療所医会の三者共催により平成8年7月6日に開かれた第四回精神科救急医療研究会(会長風祭元都立松沢病院長)における演題発表をもとに,改めて論文集として上梓したものである。
 同研究会は平成5年,千葉県精神科医療センターの主催のもとに千葉市で第一回が開かれた。その後,第二回(同6年)は神奈川県立医療センター芹香病院の主催により,横浜市で開かれ,第三回(同7年)は大阪府精神病院協会の主催により,大阪市で開かれた。さらに昨年度(同9年)は,これまでの研究会の実績をもとに,日本精神科救急学会(理事長計見一雄千葉県精神科医療センター長)としてあらたなスタートを切り,北里大学の主催にて設立総会が相模原市で開かれた。
 都道府県自治体による精神科救急医療は,昭和53年11月に発足した東京都の夜間・休日精神科救急医療体制を初めとする。その後いくつかの府県に広がったものの,全国的には少数にとどまるものであった。しかし,平成7年7月の厚生省による「精神科救急医療システム整備事業」の開始とともに,ここにきて全国各自治体に広がりを見せようとしているところである。今後は各自治体において事業運用上のさまざまな実際的諸問題が生じてくるであろうし,また質の向上のために,いずれはそれぞれのシステムの評価をしようという機運も高まるであろう。
 本書の中では精神科救急医療に関するいくつかの実践的テーマを取り上げたが,いずれも実際上の重要な問題である。またお読みいただければおわかりいただけるように,けっして一つの立場やひとつの考え方から内容構成されたものではない。それらの点がこれまでの類書とは異なるところであり,また本書の利点であると信ずるものである。
 本書が時宜にかなったもとして,あらたに精神科救急医療システムを構築することを検討されていたり,あるいはこれまでの事業の見直しを考えておられる精神保健・医療関係者の方々の参考となることができれば幸いである。
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