「あとがき」より

 本書は私にとって四冊目の論文集である。だいぶまえに活字になっていたが今までの論文集には未収録であったものもいくつか収めたので,なかには記述がすこし古くなっているところもある。たとえばDSM-Ⅲ,Ⅲ-Rについて述べていてⅣについてはふれていなかったり,薬物療法について最新の情報がとり入れられていなかったりする。しかし精神療法については,その本質がそれほど変わるわけでもなかろうから,以前に書いたものにもそれなりの意味はあると思う。「治療者の気持とその変遷をめぐって」と「家庭内暴力の臨床」は比較的最近国際学会で英語で発表したものを日本語に訳したものである。とはいっても実のところは日本語でまず書いてそれをさんざん苦労して英語にしたので,要するに元の日本語をおみせするわけである。しかし日本語で活字になるのははじめてである。
 Ⅲ部には書評をいくつか収めた。とりあげた本は精神療法家の態度や技法について書かれた本がほとんどだから,本書のタイトルにそぐわないわけでもなかろう。本という対象とかかわる私の姿勢には,患者とかかわる治療者としての姿勢と似ているところもすこしあると思う。
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