加藤 敏著

分裂病の構造力動論
統合的治療に向けて


A5判/240頁/定価(本体4,000円+税) 1999年2月刊


ISBN978-4-7724-0605-5

 不可解なその病態ゆえに臨床家を惹きつけてやまない,精神分裂病。分裂病者の治療は生物学的アプローチが昨今さかんであるが,その方法は精神不在の精神医学であるとの批判を免れない。
 著者はさきに『構造論的精神病理学――ハイデガーからラカンへ――』(1995)を著した。同書はドイツ的構造論とラカン理論による,精神病理の横断的理解であった。今回著者は,二十年余にわたる臨床の場における病者との出会いの経験を拠り所として,分裂病の経過と寛解の過程を吟味し,経時的理解を押し進めることを本書で試みた。
 分裂病の軽症化を究めるためにはグリージンガーのマニー・メランコリー論へ遡り,病態を構造的に捉えるために,ヤンツァーリクとラカンの統合をはかる。こうして著者は,ヤンツァーリクとラカンを臨床経験の場に定位し,相互受胎させて,新たな構造力動論を提示してみせる。

おもな目次

    第1章 分裂病と文化:近代文化結合型分裂病と近代文化独立型分裂病
    第2章 急性期の症状と病態
    第3章 陽性症状と陰性症状:構造論的精神分析から
    第4章 身体性の障害
    第5章 死と再生
    第6章 加害的自生発話(思考)の臨床:分裂病寛解過程における能動性亢進
    第7章 躁うつ病化する分裂病症例
    第8章 分裂病の異種性(変異性):病相性優位型と欠陥性優位型