「監訳者まえがき」より

 いじめや不登校,さらに学級崩壊などの問題で,今日の学校は深刻な課題を抱えています。そのため,文部省のスクールカウンセラーの導入にみられるように学校でのカウンセリングが重視される時代に入ってきました。しかし,派遣されたスクールカウンセラーによれば,病院臨床を中心とした,治療的,臨床的な理論やモデルが,学校現場では必ずしも十分でないことがわかってきました。難しい問題として指摘されるのは,時間的制約,過度のケースを扱うこと,家族がらみの問題,継続が難しい状況,児童生徒が自主的に来談しない問題,多人数への対応等です。それゆえ,こうした問題への対処のためには,学校現場にふさわしいカウンセリングの理論とモデルの構築が求められています。
 今日注目される動向の一つは,学校での問題に対するブリーフセラピー(短期療法)の台頭であるといえます。ブリーフセラピーでは,個人の内面よりも2人以上の関係性に,過去よりも未来に,問題よりも解決とか肯定面に目を向け始めています。また,来談への動機づけの低い児童生徒にも適用できる方法です。
 著者のマーフィとダンカンは,学校での専任のブリーフ・セラピストとしての実績をもち,新進気鋭の研究者でもあります。そして,「何がうまくいくのか」という観点から,実際に現場で体験したことがらに基づいて考えや方法を提案しています。さらに,ブリーフ・インターベンション(短期介入)の立場から「何がうまくいくのか」についての経験的な基礎研究を基にして,「クライエントが最もよく知っている」,「うまくいかなかったら,何か違ったことをしなさい」という二つの介入ガイドラインを強調しています。そして,短期介入について,初回面接の査定から,介入,進歩の評価と維持までの各段階が,事例に即して具体的に描かれています。数多くの面接場面を引用して,短期介入の具体的な考えや進め方が分かりやすく述べられています。さらに,役立つ介入のための文献の紹介もなされています。そのため,現場教師はいうまでもなく,研究者や学校のカウンセラー,相談員,さらに,学校の問題に関心のある大学院生や学生にとっても,極めて有益なものと思われます。
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