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「訳者あとがき」より

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 著者のアローズ博士は,ニューヨークのロングアイランド大学に勤務され,もう一人の著者キャレッセ博士はヨーク大学に勤務されている。お二人はご夫婦である。アローズ博士は,本文にもあったように,「ニューヒプノシス」や「リエンジニアリング・ユアセルフ」などの著作を発表している経験豊富な臨床家である。東洋に深い理解と関心を持たれ,日本にもたいへん好意的である。訳者は何回か,E-mailやFaxのやりとりをさせていただいたが,丁寧で格調高い名文からそのお人柄が伺えた。直接お会いしてご指導いただくことも快諾してくださった。
 さて,本書は,適応障害を治療するための解決志向ブリーフセラピーについての実践書である。近年,ブリーフセラピーに関する訳書,著書が多く出版されてきているが,本書はその中でもさまざまな点でユニークさをもっている。ページ数がそう多くないにもかかわらず,心理療法を再考するにあたってたいへん示唆に富む内容に,読者は圧倒されるだろう。「適応障害」に焦点化していること,DSM-Ⅳによる診断を事例を通じて非常に分かりやすく示していること,第1回セッションから第8回セッションまでの方針や方略を各セッションごとに解説していること,ニューヒプノシスに基づく解決志向型の技法を呈示していること,アメリカのマネージド・ケア下における臨床家のとるべき方向性について提案していること,などである。わが国では,現在マネージド・ケアのようなシステムはないが,「メンタルヘルスの専門家は検査と査定から免除されるべきではないし,生産性と全般的な責任に対する公平な要求からも免除されるべきではない」という主張から学ぶ必要があるのではないだろうか。
 本書をより理解しやすく効果的に読むには,第2章から始め,第3章,第4章と進んでいく方がよいと考える。技法的な部分では第7章と第8章が本書の中心部分であろう。特に第8章は,著者の長年の臨床経験を感じさせる圧巻である。第9章,第10章,第11章は,マネージド・ケアに関する記述が大部分であるが,前述のように学ぶべきことも多く含まれている。特に第10章のスピリチュアリティは,効果的効率的セラピーをめざす者が一方で常に心に留めおくべき問題であろう。
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