「まえがき」より抜粋

 この本では社会的スキル学習/SST(social skills training)のグループに役立つ,いろいろなウォーミングアップ活動を紹介しています。特に精神病院や精神障害者の社会復帰施設等を利用している人たちのグループに焦点を当てました。
 「社会的スキル」とは対人行動を通して,自分の目的を果たし,相手から期待した反応が得られるような能力のことを言います。誰でも自分の社会的スキルが高まると,毎日の生活はより豊かになり,社会の中で生きていく自信が強まっていきます。
 精神科の患者さんの治療やリハビリテーションにSSTが有効であることは,いろいろな研究で実証されてきました。そのため,近年,SSTを取り入れる病院,診療所,精神保健福祉センター,保健所,作業所,障害者職業センターなどが増えてきました。
 SSTは通常グループで行なわれ,職員は指導チームをつくってSSTを進めます。その日のSSTグループの運営にあたる人を,この本ではリーダーと呼ぶことにします。グループメンバーが楽しい雰囲気のなかで,主体的に自分の社会的スキルを習得していくためには,リーダーの技術と工夫が必要です。
 効果的なウォーミングアップ活動がうまく展開されると,メンバーの心と体を生き生きさせ,やる気をひきだし,メンバー間の相互援助を増し,グループ全体の発達をも助けます。ウォーミングアップが上手に展開されないと,その後のSSTの練習が円滑にいきません。
 この本で紹介したウォーミングアップ活動は,利用者に実際に体験してもらって評判のよかったものです。私自身が工夫したもの,ルーテル学院大学SST研究会の学生たちが一生懸命工夫してくれたもの,またSST研修会に参加された全国各地のSSTリーダーから教えていただいたもの,さらに長年にわたってサイコドラマの仲間から私が学んだものなどです。なかには,あまりにも日常的にやっているので,いったい,いつ,誰から教えてもらったのか,わからないものもあります。しかし,この本のなかのすべての活動についての説明,展開の工夫,エピソードの紹介などは著者の責任です。
 ウォーミングアップ活動から自然にSSTの練習に入っていくためには,SSTの展開についての指導技術が必要です。この本に続けて読んでいただけるように『はじめてのSST』を近く刊行予定です。
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