河合隼雄編

ユング派の臨床

四六判/254頁/定価(本体2,600円+税) 2000年2月刊


ISBN978-4-7724-0641-3

 本書は,分析心理学の治療者,研究者を一堂に集め,日本を代表する心理療法家・河合隼雄により,ユング派心理臨床の実際を知るものとして編まれたものである。
 社会は,不登校の子どもや高校中退者の増加,就職難,過酷な企業間競争,リストラという名のクビきり,老年期自殺など,不安ばかりが先行する時代である。心の豊かさが求められているものの,その具体的なヴィジョンは現れていない。しかし,ユングはいち早くこうした時代に対する警告を発しており,東洋的な価値観による人生の完成を訴えていた。ここから派生するユング心理学が,不安な現代を癒すのも当然のことだろう。本書の執筆陣も,臨床現場にいるものがともすれば忘れがちな人間の根源的な問題や文化的,社会的な状況に対し,患者とともに苦悩し,魂の恢復をはかり,〈豊かな〉人生を模索する。
 取り上げられた論文は,死の問題,母国文化,女性性,分裂病,父親観,日本文化,転移/逆転移,また,トランスパーソナル心理学や対象関係論との接近をはかるものなど多岐にわたる。
 ユング心理学の入門書は数多い中,実際に治療現場で行われているユング派の心理療法を専門的に描いたものはそう多くはない。本書はユング心理学に興味のある実践者に必読のものである。

おもな目次

    はしがき:河合隼雄
    ユング心理学の現在:河合隼雄
    心理療法過程における〈死と再生〉:織田尚生
    関係性と個人神話――精神療法の本質――:武野俊弥
    母国文化への不適応と癒し:角野善宏
    女性的なスピリチュアリティと心理療法:豊田園子
    分裂病とユング派の治療:武野俊弥
    心理療法の終結に関するユング心理学的一考察:森 茂起
    ユング派の心理療法における転移/逆転移:横山 博
    ユング心理学とトランスパーソナル心理学:藤見幸雄
    ユング派と対象関係論:鈴木 龍
    ユング精神分析の現代父親観:樋口和彦
    ユング派心理療法と日本文化:河合隼雄