「序文」より

 この本の著者たちが,今日の心理療法について書いた評論は,時節を得ていて,明快で,面白く,いろいろなことを考えさせてくれます。マービン・ゴールドフリードや,ジョン・ナクラス,ポール・ワッチェルなどの批評家たちが,心理療法の現状について語っているのと同じように,ミラーとダンカンおよび,ハべルが読者に呼びかけているのは,統一言語を使いながら,セラピーを癒やしの部分に焦点を合わせて見ていくということです。折衷的なものとはいえ,人と異なる治療システムを,いまだに提案している人たちとは違って,この著者たちは独自の心理療法をつくりだすことに全く関心を持っていません。その代わりに,セラピーの中核にあるいくつかのシンプルな法則へと,読者の関心を誘ってくれています。みなさんは,この本全体に展開されている文章を楽しむだけではなく,著者たちの心理療法への斬新なアプローチに接することで,いつのまにか,この新しい心理療法のシステムへと,考えを少しは変えてみようという気になるかもしれません。
 その共通要因というのは,4つの大きなカテゴリーに絞り込まれており,その根拠も充分な説得力を持つものとなっています。著者たちも指摘しているように,これらの4つの要因が特に強いインパクトを与えるのは,理論的な視点からではありません。それは,経験的臨床的なもので,患者に良い変化を起こす主要品目を濃縮したものに依拠しているのです。治療的介入を概念化しようとする時,それを基礎づける理論には,個人的な好みがありますが,これらの中核的な要因はどんな心理療法システムにも存在するし,私たちの関心を最もひきつけるところなのです。心理療法の歴史には,これらの共通要因に対する臨床的経験的裏付けが豊富に存在します。この本では,その豊富な臨床的素材から,注目のポイントを引き出すことで,違った角度からの心理療法の歴史の取りまとめが行われているのです。確かに,この本は,この分野で,今,流行になっている傾向――つまり,「検証された治療法」がもてはやされ,効果「実証済み」テクニックを強調する治療マニュアルが開発され,それが利用されたり,特定の疾患には特定の最適療法が使われるなどの傾向――とは著しい違いを見せています。この著者たちが,こうした流行にとらわれることなく,昔の研究や,すばらしいセラピストや哲学者達の隠喩などから集めた知恵を取り入れてきておられることは賛辞されるべきところです。この本は,初学者にもプロのセラピストにも役に立つものです。

マイケル・J・ランバート