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「この本に寄せて」より

 吉田敬子医師は周産期精神医学領域の重要なモノグラフを書き上げました。これは精神科,産婦人科および小児科医師,助産婦,保健婦そして社会福祉関係者など,子どもを出産する女性のために働いているすべての専門家にとり大変興味深いものとなることでしょう。最近の研究により,子どもを出産する女性はメンタルヘルスの問題が高率に生じており,それがどのようなものかについて,さらにはこれらの問題が母親だけではなく,発達過程にある子どもやさらに家族全員に否定的な影響を与えていることも,次第に認識されるようになってきました。
 今述べてきたような,メンタルヘルスの障害の予防や治療,ケアをしているにもかかわらず,困難に直面する理由には多くの要因があります。その中でもとりわけ重要なものは,専門家や一般の人々のあいだで認識が欠けていること,人的社会的資源が不足していること,最後に精神障害としての偏見があることでしょう。吉田医師が書いたモノグラフは,これらの問題点の解決に役立つことでしょう。彼女は日本でのこの新しい領域の専門性を推進するにふさわしい資質を備えています。彼女は小児精神科医であり精神科医として,私たちの母子ユニットで数年にわたり臨床研究を行ってきました。そこで精神障害の母親とその治療および乳児に与える影響について調査し,またとりわけ重要な問題として,精神薬物の母乳移行についての研究を行いました。その結果は,重要な国際専門雑誌に掲載されています。現在彼女は国際産後うつ病研究の重要なメンバーでもあります。吉田医師によって書かれたこの本は,この領域についての深い経験と知識が反映されています。この本が広く読まれ,日本での周産期精神障害の母親とその子どものケアがより一層充実することを望みます。

ロンドン大学精神医学研究所 周産期精神医学部門
ベツレム ロイヤル・モーズレイ ナショナルヘルスサービス トラスト

 Chianni Kumar   

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