H・S・ストリーン著/遠藤裕乃・高沢昇訳

逆抵抗
心理療法家のつまずきとその解決

A5判 302頁 定価(本体4,800円+税) 2000年11月刊


ISBN978-4-7724-0672-7

 面接への遅刻やキャンセル,治療中の沈黙や居眠り,過度なおしゃべり等々,面接過程で現れるクライエントの抵抗はさまざまに論じられるのに比べ,治療者側のこうした行動については容易に合理化されがちで,正面から論じられることは少ない。
 本書では,治療の進展を阻む治療者側の無意識の行為や振る舞いを「逆抵抗」ととらえ,著者がスーパーヴァイズした心理療法家,精神科医,ソーシャルワーカーらの事例をなぞる形で治療者側の典型的な逆抵抗の姿を鮮やかに浮かび上がらせていく。
 面接申込みの電話から終結まで,さまざまな治療局面で生じる逆抵抗を追体験しながら,読者はクライエントとのかかわりにおける治療者側の行動の意味を改めて考え直す必要を強く感じさせられ,多くの示唆を得るに違いない。
 クライエントと同様,治療者もまた,治療過程のどの段階でどのようにして危険と感じるテーマから逃げ出すのか。治療者が自らの抵抗の意味に気づくことなしにクライエントへの真の手助けはできないと強く訴える本書は,対人援助の専門家たちが日常臨床の中で自らの精神力動をとらえ直すための最良のテキストとなることだろう。

おもな目次

    第1章 逆抵抗とは

      逆抵抗の分類
      明らかな抵抗と目立たない逆抵抗
      過去にこだわる逆抵抗,現在にこだわる逆抵抗
      行動化
      意識的な敵対と善意から生じた敵対
      逆抵抗に対する抵抗
      逆抵抗と治療者の日常生活

    第2章 初回面接における逆抵抗

      最初の電話での応対
      クライエントが問題を提示することと逆抵抗
      治療機関と逆抵抗
      治療者の服装と面接室の装飾
      紹介者
      初回面接

    第3章 ハネムーン期と治療者の逆抵抗

      ハネムーンが起こるのを阻止する
      長引いたハネムーン期を利用する

    第4章 最初の危機と治療者の逆抵抗

      治療者の超自我があらわになるとき
      治療者の誇大的空想と治療の第一危機
      なぜクライエントは,治療の第一危機に治療を中断するのか
      治療の第一危機における症状の再発
      身体症状と治療の第一危機
      「ノー」と言えない治療者と治療の第一危機
      クライエントにとっての重要な人物と治療者の逆抵抗
      治療者が自分の失敗を認めること

    第5章 中期:基本原則にかかわる治療者の抵抗

      遅刻
      面接予約のキャンセル
      料金
      沈黙
      沈黙を武器として使う治療者
      うわさ話
      絶え間ない要求
      治療外での接触

    第6章 中期2:クライエントの目立たない抵抗に対する治療者の反応と,治療者の目立たない逆抵抗

      転移−逆転移関係の維持

    第7章 終結期

      心理療法終結の基準:その主観的問題
      心理療法終結の基準:その客観的要因
      早すぎる終結
      長引いた治療と終結
      分離不安
      クライエントの退行に対応する
      感情の否認