あとがき

 本書は著者のここ15年ばかりの犯罪学関連論文の大部分を収録したものである。金剛出版からはすでに拙著『アルコール犯罪研究』を刊行している。本書は著者の犯罪学関係の業績,論文からアルコール関係や欧文論文を除いた,主要な論文を収録してある。前著と併せれば,著者の犯罪学関係の業績の大半がこれら2冊に網羅されることになった。とはいえ「反応性精神病」など著者にとって少なからず重要と思われるいくつかの論文は紙数制限もあり,本書に収録できなかった。近い将来増補改訂版なり,本書の続巻として公刊される日を望んでいる。
 本書収録にあたり,原著論文を一部ないし大幅に補充したものもあり,本書のために新たに書き下ろした論文も収めた(用語の統一もはかったが,「精神分裂症」,「精神分裂病」などはそのままにしておいた。著者自身は「精神分裂病」は単一の疾患単位として未だ確立されたものではないとの思いを抱いている。したがって前者の表現がより正確と考えている。しかし一般的表記は後者の方が多い。著者もこれに従って表記する機会が多い。このような著者の立場をそのまま伝えるために,あえて統一をはからなかった)。
 一部の論文については他の著書などに収めたものもあるが,絶版になっていたりして,入手困難になり,読者に不便な思いをおかけしていた。ここに著者の犯罪学関係の主要論文が一冊にまとまり,研究書として世に出ることになったことは著者にとって望外の喜びである。……
 本書においては,暗殺や大量殺人,ストーカー犯罪,ハイジャック犯罪など従来わが国の犯罪学研究において顧みられなかった研究分野や最近顕著になりつつある,話題性に富んだ主題も扱っている。この限りでは他の犯罪学,犯罪精神医学の成書にはない独自性をもっていると自負している。さらには最近の少年の凶悪犯罪は,量もさることながら質的に変化してきているとの立場から,この変化を「自己確認型」非行・犯罪と規定,表現し,「空虚な自己」,「のび太症候群」などの著者の鍵概念,用語を用い,現代青少年の心理的背景を分析してみた。また「犯罪精神病理学」の新しい学問分野の可能性を提示してみた。読者の方々に興味をもって頂ければ幸いである。
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