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序文

 本書の原著であるトム・アンデルセンTom Andersen編著“The Reflecting Team─Dialogues and Dialogues About the Dialogues” (New York : W.W. Norton & Company) が出版されたのは1991年ではあるが,すでに1987年の “Family Process”(vol.26, p.415-428)などの家族に関する専門的学術雑誌にその理論と実際とが紹介され,多くの臨床家の関心,とくにミラン・システミック・セラピーを実践していた人達の関心を引いたようである。Reflecting Teamの場合は,いわゆるアッカーマン研究所のコンサルテーション・チームやミラノ・チームとは異なり,鏡の裏側にいるリフレクティング・チームメンバーが面接の途中,それぞれ熟考した面接場面に対する考えを面接者と家族のいるところで披露し,面接者と家族の思考の転換を促し,新たな物語を構成し,自らの解決方法を共働して編み出すところにその特徴がある。そこには,ベイトソンBatesonやマツラナMaturanaらの認識論やGalveston Family Instituteなどの考えが大きな影響を与えているが,その一方,Reflecting Team Approachは,今日のナラティヴ・セラピーやハーレーン・アンダーソンHarlene Andersonらのコラボレィティブ・アプローチなどの発展を促し,社会構成主義的治療論の確立を促進し,ここに新たに,本書の出版を企画する過程を生み出したと考えられる。
 前述の“The Reflecting Team”なる原著は,トム・アンデルセンが自らの論文の他に,諸外国において共同研究を行った治療チームの代表者であるカッツArlene M. Katz,ラックスWilliam D. Lax,デヴィソンJudith Davison,ルッサルディDario J. Lussardiなどの論文を含め,The Reflecting Teamがいかにそれぞれの社会の要請に答え得るかを明らかにしたものである。監訳者である私が主催している家族療法家のための研究会は,ここ10年間毎年世界的に著名な家族療法家をお呼びして家族療法ワークショップを開催してきたが,その多く巨匠,例えばトムKarl Tomm,ホワイトMichael White,ホフマンLynn Hoffmanなどは自らのワークショップにReflecting Teamの技法を導入し,いかにそれが有効であるかを我々に示された。
 以上の経験から,これは我が国でも適用し得ると考え,トム・アンデルセンとその業績を我が国の家族療法家に紹介し(家族療法研究 Vol.11, No.2, 1994),さらに原著の翻訳を決意しその了解を求めたところ,トム・アンデルセンよりその後のThe Reflecting Teamの経験から,原著に新たな技法の発展を含めた方が望ましいとのご返事を戴き,下記のような内容を有する“REFLECTING PROCESSES ; conversations and conversations about the conversations”なる本の翻訳・出版を促された。1996年1月に我々の要請に応えて来日された際,訳者たちはトムに内容の説明を求め,翻訳に力を入れたが,ノルウェー語化された彼の英語を日本語にするのにはかなりの時間を要することを覚悟しなければならなかった。

 原著のCONTENTS
 THE REFLECTING TEAM→REFLECTING PROCESSES
 Foreword(Lynn Hoffman)→(書き換え→鈴木浩二)
 Introduction(Tom Andersen)→(存続)
 Preface(Jutgen Hargens)→(存続)
 
 Part I : The Refleting Team
 1. The Context and History of the Reflecting Team(Tom Andersen)→(存続)
 2. Basic Concepts and Practical Constructions(Tom Andersen)→(存続)
 3. Guidelines for Practice(Tom Andersen)→(存続)
 
 Part II : Dialogues About the Dialogues
 4. Mike and Various Definitions of a Problem(Tom Andersen)→(存続)
 5. Talking About Leaving Being Left,and Being Left Out : Four Reflecting Conversations(Tom Andersen)→(存続)
 6. Afterword : Continuing the Dialogue(Arlene M. Katz)→(削除)
 7. The Reflecting Team and the Initial Consultation(William D. Lax)→(削除)
 8. Reflecting Dialogues in Supervision and Training(Judith Davidson & Dario J. Lussardi)→(削除)
 
 Part III : Further Reflections
 Epilogue : Reflections on the Book Two Years Later(Tom Andersen)→(下記の3つと交替,Epilogue 3は新たに挿入された論文)
 Epilogue 1 : Ending this book is a new beginning(Tom Andersen)
 Epilogue 2 : Reflections on the book two years later(Tom Andersen)
 Epilogue 3 : Reunion with the book in 1994 ; six years later(Tom Andersen)
 
 以上のように原著を編集し直したうえでの翻訳は我が国が最初であり,いずれはどこかの国で翻訳されるかもしれないので,できるかぎり読み易く訳すようにお願いした。資本主義社会における家族療法と異なる社会主義国家におけるこの家族療法はまさに社会構築主義のそれを代表するものであると考えても間違いではなかろう。21世紀に多くの方々が本書を読まれるよう期待してやまない。

 鈴木浩二

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