まえがき

 今回はブリーフセラピーのシリーズとして,学校,医療に続いて,産業分野をとりげました。ブリーフセラピーはひとつの有効な方法であると認識され,多くの分野で取り入れられ,実践されています。今日,産業分野においては,職場で働く人たちとその家族の健康を守ることが企業にとって,とても重要な課題であり,それに取り組まざるを得ない状況にあります。職場における多大なストレスはどの年代における従業員にとっても,職場だけでなく,生きていく上での相当な心理的負担になっています。もし,職場状況が原因で従業員の身に何か重大な事が起こったと認定されれば,企業の社会的責任は免れません。それゆえ,従業員の心理的健康の予防,維持,回復に企業も本格的に取り組み始め,常勤のカウンセラー,産業医をおくところや,外部の心理相談機関と専属の契約を結ぶところが増えてきています。
 本書の執筆者は早くから企業の従業員を対象にしたセラピーを行ってきた経験豊かな人たちで,そこにブリーフセラピーを導入し,一層の効果をあげています。本書は,職場関係者の連携,メンタルヘルス教育,それにケースワークという産業カウンセラーにとっての主要な業務内容について,事例に基いて詳細に述べています。その中には,編者の定義する狭義のブリーフセラピー(総論参照)とは必ずしも一致しない,短期で効果的という意味でのブリーフサイコセラピーの観点も入っていると思われますが,ほとんどの論文はブリーフセラピーの考え方と技法によっています。
 本書が産業カウンセラーやそれを目指す人たちに受け入れられて,日々の実践や研修で取り入れられ,働く人たちとその家族の健康に少なからず貢献できれば幸いです。……(後略)

編者 宮田敬一