「第一章 本書の利用法」より

 本書は、ブリーフ・サイコセラピィ(ブリーフ・セラピー)のさまざまな側面に、また包括的で課題志向的なブリーフ・セラピーのモデルの実践的適用に、面白くてためになる案内役となることを意図して書かれたものである。
 本書の特色のひとつは、大量の情報のなかからエッセンスの部分を抽出し、それをまとめているということである。このことは、読者の関心をそらさないために役立ち、アバディーン王(Lord Aberdeen)が来客にふと「ただひとつ遺憾なのは、あなたが短期滞在でないことです」と口をすべらせてしまったような心情にさせないためでもある。
 他方、本書のような接近法をとったのは、ブリーフ・セラピーについてかなり徹底的に研究した文献のなかにみられるちょっとした深みにはまることを割愛したい意図もある。本書がブリーフ・セラピーの文献を包括的にレビューするための代わりの書になるなどとは考えてはならない(もっとも、巻末の文献のなかには、よい資料がたくさん見つけられよう)。これと同じように、セラピストなればこそ得られる多様な経験や最良の訓練ないしスーパービジョンや、そこらから生まれる知識や技能(スキル)に本書がとって代わろうとするものではない。
 本書のもうひとつの特色は、ブリーフ・セラピーに関するセラピスト各自の考えをまとめ促進するための手助けとすることを目的としており、どのような治療であっても避けられない偶然の要素を予想しようとしたり、ある特定の理論だけに盲従したりすることを目的としていないということである。そうすることで、セラピストは、効率的な心理療法をそれぞれ自分にあった効果的なモデルに組み立てていく作業に迫られるからである。
 本書の心臓部分は、典型的なセッションにおいてクライエントに用いる具体的なステップや戦略についての実践概要についてのべたところである。場合によっては、例を引きながらこれらのステップについての説明もなされている。読者は、解決志向的セラピー、システム的/戦略的心理療法、認知\行動療法、対人関係的セラピー、そしてわずかに力動的心理療法からの影響を認めるかもしれない。しかしながら、このような概要や例は、多様な形態に共通する一般原則をもとにしてうち立てられたひとつの包括的なブリーフ・セラピーのアプローチであるとみなすのがもっとも適切である。多種多様な問題にブリーフ・セラピーをどのように適用するかについてのより詳細な説明は、巻末の文献でとりあげた数多くの資料のなかからみつけることができる。
 迅速にレビューすることができるように、節によっては要点のまとめからはじめられ、それからさらに詳細な議論へとつづいているところもある。それと同じように、最初に知識クイズがあるのは、ブリーフ・セラピーの実践を支持するデータを示すためである。
 本書で示される概念のいくつかを、読者が自分の臨床実践に統合するときには、自分にしっくりするやり方で試してみるとよい。その場合、一度にほんのひとつかふたつくらいの考えを試すにとどめる。それは、あなたやクライエントがそうした考えにどれだけ好感がもてるのかを観察するためである。あなたがこうありたいと望む結果を得るのに必要なこととして、調整したり即興したりすることにあなた自身が自由な気持ちでいるべきである。
 結局のところ、次のような点が本書の目標であり本書の成功の鍵をにぎっている。つまり、あなたやあなたのクライエントにもっとも機能するような複数の理論や技法は、よく考えながら統合し、かつ選択して適用するということである。
  (後略)