「あとがき」より

 筆者と箱庭療法との出会いは,大学卒業間際の春であった。当時書店で『箱庭療法入門』(誠信書房)を見つけ,自分自身では「こんな風変わりな心理療法もあるのか」と思いながら半信半疑のまま,後輩たちには知ったかぶりをして紹介をした記憶がある。
その後小学校の教師として出発し,いろいろな子どもたちに出会ううちに,当時大学や先輩の教師から習った来談者中心療法の技法では小学生を相手にするには難しいところがあるのではないかと,自分なりに思い始めていたところで箱庭療法という技法を思い出し,そこからほとんど独学のような形で実践を始めた。実践を始めて間もなく,箱庭療法とはどんなものなのかということを筆者自身にうまく教えてくれるようなクライエントと出会ったことや,よい指導者にめぐり会うことができたことなど,いくつかの幸運に恵まれて,ますます箱庭療法に関心を持つようになっていった。
箱庭療法を通じて,多くの人に出会い,また,教育や,人間の心理的成長についてずいぶんと考えさせられ,自分自身も成長させていただいたと思っている。このような事情であるから,箱庭療法に取り組んできたことによって,並行して筆者自身の青年期の課題を克服してきたと言っても,過言ではない。
今回,ここにこうして,箱庭療法に関する研究をひとつの書物としてまとめることができ,筆者自身の足跡を振り返ることができるとともに,箱庭療法の発展にわずかながらでも寄与できることは,まことに嬉しいかぎりである。
……(後略)

平松清志