もどる

「日本の読者の皆さまへ」より

 この本は,最初,Guilford Pressから英語版で1988年に出版され,その後イアリア語版(Astrolabio, 1993)とドイツ語版(Suhrkamp, 1996)が出版されている。ここでさらに日本語版が加わることで,本書は世界中のより多くの人々の目に触れ,読まれることになる。本書は非常にわかりやすく,受け容れやすいことで,これまで好評を博してきた。本書をベストセラーと考えても,おそらく自己愛的過ぎることはないだろう。
 精神分析は,ここ数十年来,多くの重要な側面において大きな変貌を遂げてきた。こうした変化の多くは,ハインツ・コフートの考えがもたらした多大な影響に反応したものだったといえる。しかし,そうした精神分析の理論と実践における進歩的発展はコメントされることが少なく,さらに,数々の現代精神分析の概念を生み出した存在としてコフートがめったに言及されないのは,驚くべきことである。すべての現代科学や人知に関する分野と同様に,精神分析も絶え間なく流動し,変化している。その結果,被分析者を苦しめているより広い範囲の問題に対して,精神分析的治療の適用が広がり,きちんと訓練された精神分析家の治療的効果性は向上してきている。この変化の動きは,これからも続いていくことだろう。私は,われわれに共通したこの進歩発展に対して日本からの貢献が加わることを,心より楽しみにしている。
   2001年1月3日

 アーネスト・S・ウルフ

もどる