「日本での出版によせて」より

 ダニエル・ギフォート氏と私が,“Building Teams and Programs for Effective Psychiatric Rehabilitation”の編集にとりかかってから5年以上が経過しましたが,そのメッセージはいまだにはっきりと心に響いてきます。
 これまでも,重度精神障害のある人々が生活目標を達成することを支援するための実践,しかも効果が実証されたさまざまな実践について,多くの研究者が概説してきました。しかし残念なことに,実際の実践場面は,研究成果よりも10年以上の隔たりがあります。隔たりの原因はたくさんありますが,おそらく鍵となるのは,援助者がチームで実行できる支援プログラムを開発してほしいというニーズに関連していることでしょう。1998年にこの本を編集した際,私たちは,これらのニーズに対応する方法論を整理することから始めました。もちろん言うまでもないことですが,私たちも効果的な治療方法には実証研究に裏書きされた基準があると考えていましたし,チームや支援プログラムに向けた改革の方法を開発するにも,このような実証研究に裏書きされた基準が必要であると確信していました。
 この本にある多くのメッセージは,日本の読者の方々にとっても,特に実りのあるものでしょう。なぜなら,第2次世界大戦後まもなく,W・エドワーズ・デミング氏とともにチームワークと生産性に関する画期的な理論を展開したのは,日本企業だったのですから。このように総合的な質の管理に関するさまざまな方法は,もとはビジネスの世界で発展したものですが,組織学の研究者によって対人サービスの分野にも見事に応用されました。同じように,この本ではリハビリテーションチームのために,リーダーシップや改革を促進する方法論を紹介する次第です。
 最後になりますが,この本の共同執筆者とともに,翻訳を担当した野中猛氏,柴田珠里氏に感謝の意を表します。私は,おふたりがこの本の完成に向け,どれだけ力を尽くされ,時間を費やされたかを承知しております。そして将来,日本のさまざまな援助者の皆様が,利用者のニーズに合うチームや支援プログラムの開発を目指して,最善の実践とは何なのかを考える際に,この本が一助となることを願っております。

2001年10月22日 パトリック・W・コリガン記す