「はじめに」より

 解決志向ケースワークは,アセスメント,ケースプランニング,ケースマネジメントへの一つのアプローチであり,クリニカル・ソーシャルワークといわゆるソーシャルワークを結びつけるものである。このテキストは,ポストモダンな世界におけるケースワーク実践にとって重要と考えられる概念,スキル,そして実践に対する幅広い基盤に基づく全般的な紹介である。解決志向ケースワークは家族中心ソーシャルワークにその基礎をおいており,ソーシャルワークと精神保健領域の臨床的実践から発展してきたものである。このモデルはさらに薬物耽溺や暴力への取り組みから発展してきた,問題志向の最たる再発予防アプローチと,家族システムズセラピーから発展した解決志向モデルを結びつけている。問題に焦点を当てるアプローチと解決に焦点を当てるアプローチを統合することによって,家族やケースワーカーやサービス提供者との間の処遇のためのパートナーシップの形成が容易になってきている。処遇のパートナーシップは常に重要であるけれども,資源が限られ,社会的要請がますます強くなってきているポストモダン時代にはこのパートナーシップはますます重要になってきている。社会サービスへの解決志向のケースワーク・アプローチは,安全をもたらし,自分達の能力への家族の自尊心を回復していくのに必要なスキルに実際的に焦点をあてるようなパートナーシップを形成するものである。
 このアプローチは,虐待やネグレクトの再発に関わると見られている問題を解決しようと取り組んでいたワーカーや,そのスーパーバイザーや処遇提供者との話し合いの中から発展してきた。その問題には次のようなものがあった。

 ・ハイリスクのケースのケースワーク関係は対立的になっており,リスクのアセスメントに必要な情報入手にはそれが著しい障害となっていた。
 ・ケースプランは,具体的なスキルの習得を目標とするものではなく,カウンセリングに参加することを目標にして作成されていることが多かった。
 ・危機状態のケースは,早期には対応されずに,虐待やネグレクトが再発した後の危険信号を出していた(例えば,ハイリスクな行動に陥ってしまっていた)。
 ・アセスメントとケースプランは,往々にして保護者(たいていは母親)がどの程度保護を必要としているかということだけに基づき,困らせている家族メンバーを浮き上がらせる個別の目標に基づくものではなかった。
 ・家族がずっと困ってきた日頃の発達上の問題(例えば,トイレの訓練)がいつのまにか忘れ去られ,従順かどうかといった問題が主要な関心にとって代わっていた。
 ・ケースワーカーは,しばしば,ある一つのこと(それは非常に曖昧なことが多い)を心にとどめ,その一方で処遇提供者や臨床家はそれとはまったく異なることを考えていた(これもまた曖昧なものであったであった)。
 ・目標設定のスキルが明確ではないので,ケースワーカーはクライエントに,現在が安全かどうかを伝えるのに,しばしば(臨床的な判断のみに基づく)処遇提供者に従ってやっていた。
 ・裁判所は,クライエントにはどのようなスキルが必要なのかを具体的に見出すための組織的な試みがなされないままに,ケースの事実を報告されることがよくあった。

 臨床家とケースワーカーは目標成果に合意した上で,もっと緊密に,共に仕事をしたいと願ってきた。共通の概念マップがないことがこの両者や家族とのパートナーシップを進めて行く上で大きな障害であると考えられてきた。
 解決志向ケースワークは個々ばらばらになっている援助ネットワークを統合するための共通する概念的枠組みとして役立つことを示してきている。このモデルは再発を予防するのに必要な具体的な目標設定スキルを提供し,家族の対応能力を積極的に受け入れることから,治療システムのすべてのメンバーは共通の目標に向かってやっていくことができる。また,このモデルは何が有効かということに基づいたパートナーシップ・モデルを利用しているので,家族メンバーは,問題の別の側面に働きかけている処遇提供者とともに,進歩に役に立つ情報を分かち合える立場にいる。さらに,解決志向ケースワークは,家族の各人がもつ安全性への関心を無視することなく,家族の持っている対応能力を引き出す方法を提供している。我々は家族の目に見える解決につながるパートナーシップを発展させることが将来の再発を予防する最善の方法だと考えている。
 本書『解決志向ケースワーク:臨床実践とケースマネジメント能力向上のために』は,実践者が現代のソーシャルワーク実践で直面している諸問題に対応する時に導きとなる重要な視点とスキルを提供するために書かれたものである。このテキストはアセスメント,ケースプランニング,ケースマネジメント,そして処遇上の協働に関して多くの有益な論述を含んでいるが,ソーシャルワーク実践を学ぶ学生は,本書では取り扱っていない領域の知識,例えば文化やジェンダー,社会的な取り組みの範囲,そして特定のアセスメント・ツールに関する知識を知ることも必要である。また,このテキストは実践者が毎日の仕事を遂行するのに不可欠な基本的なケースワークに関する特定の情報を提供しようとするものでもある。
本書は3部から構成されている。第1章と第2章を含む第1部では,解決志向ケースワークの考え方の発展と理論的な基盤を示している。ここで,読者は,しっかりなされたケースワーク実践はどのように成り立っているのかということについて,従来からずっとなされてきた専門的な議論の中で,このアプローチを位置づけることができる。第1章は,家族中心の実践的アプローチの大きな影響をはじめ,解決志向セラピーや再発予防理論のより臨床的な影響を議論している。第2章は,ケースワーク実践の発展の足跡をたどり,我々のアプローチをポストモダン世界に出現しつつある危機状況のニーズに適用する方法の構築を試みている。
 第2部はアセスメントとケースプランニングの問題に取り組んでいる。まず,第3章はアセスメントを家族の毎日の生活にかかわらせ,家族がケースワーク関係を役に立つパートナーシップとしてとらえて,審判を受けたり強制されたりする関係であると思いこまないようにすることが大切であることを議論する。第4章は,ハイリスク状況につながる家族の日常生活の特定パターンを見つけることの重要性を紹介する。第5章はひきつづきこの行動パターンについて議論しながら,この問題が将来再発するのを予防するのに必要なスキルを見定めることが重要であることについて論じている。第6章はアセスメントのために情報を集めて,予防プランの作成について家族と合意するためにそれを使用しようとしている読者を援助する。この章は,さらに,家族と共に測定可能な目標を構成する方法,目標に関する合意を得る戦略,そして初期の安全なプランを策定する技法に関する情報も提供している。
 第3部は,ケースマネジメントの問題と,処遇チームのメンバーがどのように解決志向ケースワークのアプローチを経験するかに焦点をあてている。第7章は,ケースプランを作成する時にケースマネジメントを導くような書類や課題を作成することの重要性を議論する。第8章は,バラバラのサービス提供体制のなかで,ケースマネジメントをしっかりとやっていこうとするとぶつかる現実社会の問題を提示している。さらに,これらの問題への対処方法や,家族メンバーへのリスクを少なくするような予防スキルへ処遇チームの焦点を当て続ける方法に関する特別な提案をする。第9章はケースマネジメントにおける処遇提供者の位置を検討する。その章は,ケースワーカーと密接な関係をもって仕事をする臨床家や,処遇提供者が自分たちの協働的な仕事をどう考えているのかを理解したいと思っているケースワーカーのために書かれたものである。第10章は第3部の結論として,解決志向ケースワークにおける主要な面接技法を概観している。面接技法は本書全体を通じて議論されるが,すべての面接技法がこの章にまとめあげられている。したがって,本章を読むことで,それらの相違点や類似性を研究,実践できることになる。
 解決志向ケースワークは,多くのソーシャルワーカーにこれまでとは異なった仕事上の体験を提供するものなので,第11章は解決志向ケースワーク・モデルの体験にスタッフがどう反応するかを論じている。ワーカー,スーパーバイザー,処遇提供者が,欠陥モデルへの不満と今までのアプローチを変えることの利点,新しい取り組みへの挑戦と,その結果としてのサクセス・ストーリーについて彼ら自身の言葉で論じている。このテキストは,ケースワークにおける解決志向アプローチを訓練する際のいくつかの考慮すべきことについての要点を述べることで結んでいる。