「序文」より

 本書は,問題の多い家族に育ったすべての人たち,私たちがサバイバーと呼んでいる未知数の人たちのためにあります。私たちのテーマはリジリアンス,つまり,人生の初期に苦しめられた困難から回復する力です。これまで,この主題についての情報が得られるのは,アカデミックな書物や専門雑誌にほぼ限られていました。私たちの目的は,リジリアンスについて分かったことを,その知見からもっとも益を得ることができる人たち,つまり,サバイバーたち自身に手わたすことです。これは吉報です。幼い頃の困難は,長い間続く痛みをもたらしかねませんが,同時に,それは並外れた強さと勇気を生み出す土壌であることがしばしばです。もしもあなたがサバイバーならば,おそらくその痛みについてはもう十分に知っていることでしょう。ですから,これは,強さと勇気についての本なのです。
 執筆にあたっては,社会に広く行きわたっている,傷物としてのサバイバーのイメージにさらされてきた,セラピストや教育関係者,そして政策者をも読者として想定しました。そういう方々には,サバイバーの(しばしば驚くべきことであるのに見過ごされてきた)熱意と達成について読んで頂くことになります。私たちの提示する研究と洞察が,ケアされているサバイバーたちにとって新しく,そしてよりよい指導や治療,プログラムの土台となることを願っています。
 二人で本書を手がけると決めた当初,私たちは,どちらの声を用いるかということに苦心しました。私たちは,二人の考えや経験を語っていますが,読者の方々には,スティーヴンとシビル,彼と彼女,とのあいだを行ったり来たりすることで混乱してほしくなかったのです。かといって,「私たち」と言うのも意味をなしません。私たちが語るたいていの出来事は,どちらか一方に起こったことですから。お読みいただければ,私たちが一人称の「私」という表現に落ち着いたことが,お分かりになるでしょう。それは,二人の声や考え,そしてそれぞれがいた現場を共にする一つの工夫なのです。

スティーヴン・ウォーリン, M.D.
 シビル・ウォーリン, Ph. D.