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「はしがき」より

 平成7年から日本の公立学校に「臨床心理士」という外部の「こころの専門家」がスクールカウンセラーとして派遣された。これは日本のスクールカウンセリングの歴史では画期的な事業である。いや,日本の近代教育史上といっても過言ではないかもしれない。
 臨床心理士をはじめとするこころの専門家の専門性と学校側の連携により,この制度は大きな成果をおさめている。この成果を土台に文部科学省は平成13年度から5カ年の間に,全公立中学校にスクールカウンセラーを配置することを決め,実施されてきている。
 われわれは年に1度スクールカウンセラーの腕を磨き,新しい「臨床の知」を提供し,相互交流を深めるため,全国学校臨床心理士研修会を開催してきている。本書『実践! スクールカウンセリング』は昨年の第6回大会の研修内容を資料としたもので,最新の情報を提供する目的で企画された。スクールカウンセラーの技術向上とともに,学校現場の教師,保護者,児童生徒の支援に役立つ「臨床の知」を提供しようとするものである。
 本書は,4部13章から構成されている。
 冒頭は,河合隼雄会長の基調講演である。
 第1部は,スクールカウンセラー制度の歴史的経緯と社会的意義,スクールカウンセラー事業の総論から生まれてきたアセスメント論や保護者面接技法論が展開され,本書の入り口となっている。
 第2部は,学校臨床で話題となっているいじめ,不登校,非行,発達障害などの実践的対応が書かれている。また,スクールカウンセラーがホームルームの時間などで授業をすることもよくあるが,そのための議論も提供した。
 第3部は,学校臨床の特徴である教員組織や虐待の問題,危機介入の実際と理論が提供されている。
 第4部は,スクールカウンセラーが活動していく過程でぶつかるさまざまな課題,ゆきづまりを乗り越え,力量を高めていくためのサポートシステムやスーパーヴィジョンの実際が提供されている。

 このように本書は入門書ではなく,スクールカウンセラーが直面する課題に実際に役立つ最新の情報を網羅している。「臨床」をキーワードに実践する臨床心理家がどう学校問題にアプローチしているかを,具体的に書いてもらうよう各執筆者にはお願いした。お読みいただければわかるよう,優れて実践的な論文が執筆陣から寄せられた。現在活動しているスクールカウンセラーの方々のお役立つことを願っている。
 また,実際のスクールカウンセラーはもとより,これからめざす大学院生,教育相談,養護教諭,生徒指導などにたずさわっている教員に読んでいただき,児童生徒や保護者への援助にお役に立てば,執筆者たちはたいへん嬉しいことである。
……(後略)

平成14年6月20日 編集代表 村山正治

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