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「あとがき」より

 昨年8月,「第6回全国学校臨床心理士研修会」が,東京の日比谷公会堂と上智大学を会場として開催された。主催したのは,日本心理臨床学会,(財)日本臨床心理士資格認定協会,日本臨床心理士会の3団体と東京臨床心理士会であり,実施には学校臨床心理士ワーキンググループがあたった。一昨年の暮れに,第6回大会の実施計画が急浮上したのだが,この段階から,研修会の成果を何らかの形で集約し,出版しようという話が学校臨床心理士ワーキンググループの会合の席上で話題に上っていた。私も,「スクールカウンセラー活用調査研究委託」の準備段階から関わってきた者の一人として,ぜひとも実現したいと思っていた。特に,「スクールカウンセラー活用調査研究委託」から「スクールカウンセラー活用事業補助」への転換点となる,記念すべき大会であり,日本で初めての全国レベルでの臨床心理実践による成果を研修の形で結実する意義を高く評価していたからでもある。しかし,まさか自分が編者の一人になるとは思ってもいなかった。それが,思いもかけず,実行委員長をお引き受けし,それが縁となって,本書の編集に携わることともなった。
 そもそも,この大会は開催される予定のなかった大会である。第5回全国大会が終わった頃には,制度化の流れを踏まえ,地域での研修充実の可能性や文部省(当時)による全国レベルの研修・連絡協議の方向性が考えられるようになっていた。活用調査研究時代の全国研修会は止めても良いのではないかと言う観測が出ていた。しかし,11月に入り,公的な研修予算が出そうもないということになり,全国研修会は従来どおり行う必要性が出てきた。また,「制度化元年」を迎え,文部科学省のお膝元である東京で開催することにより制度の定着を図る必要性も考慮された。急遽,学校臨床心理士ワーキンググループで実施の方向で検討が始まり,上記の三団体とも協議し,東京で実施する運びになり,東京在住の私が急ごしらえの実行委員長となることになった。開催まで日のないところで大慌てで会場を探すことになったのである。
 2月になると,東京での細かい準備は東京臨床心理士会の学校臨床心理士専門委員会に分担してもらい,開催事務に関しては,学会事務センターの専門家集団にも分担してもらう体制を作る計画が固まってきた。また,従来は,実践事例検討が主体の「学会方式」で行ってきたが,特定テーマごとの分科会による「ワークショップ方式」に改める方針が提案された。全体テーマは,「制度化元年のスクールカウンセラーの力を結集する」と定まった。
 方針が定まると,大童で準備が始まった。心配なことは多々あったが,とにかく突き進むしかない。夏になると,東京は例年にない暑さに襲われ,参加者の健康も懸念されるほどであった。当日は晴天に恵まれ,しかし,少し前までの猛暑でもなく,919名の参加者を迎え,大会を成功裡に終えることができた。新しく取り入れた形式はおおむね成功し,学校臨床心理士という実務的専門家集団でなければできない濃密な研修が繰り広げられた。
 大会が終わると編集作業が待っていた。スクールカウンセラー事業の到達点を示すものとして企画された本書の編集は,しかし,思わぬ暗礁に乗り上げた。当初予想した内容に比べると,ワーキンググループのメンバーでもあり,大会の分科会の世話人をも兼ねた著者の方々の原稿は,事業の長足の発展を反映して,はるかに先端的なものとなり,一見するとひどくばらばらのようにも思えた。また,こうした事態を打開するには,関係者が多忙のため,打ち合わせもままならなかった。「第7回大会までには出版したい」と,強引に編集を進め,多くの方々に不愉快な思いを強いることとなった。ご迷惑をおかけした方々にこの紙面を借りて,お詫びしたい。しかし,その結果は計画段階に比べるとより発展し,充実した内容となった。著者の方々のお力の賜物と感謝している。
 編集を終えた今,この数年を振り返ってみると隔世の感を禁じ得ない。平成7年に活用調査研究が始まった時点では,全国でわずか154校しかなかった配置校が,活用事業補助の始まった平成13年度には3,750校にも上った。数字だけの問題ではない。「量は質に転化する」という。スクールカウンセラーとして活躍してこられた方々が到達された実践の質にも目を見張るものがある。これは,毎年の全国研修会に参加し,ひしひしと感じてきたことではあった。こうした業務の質的向上を臨床心理士全体の共有財産としたいと願ってきた。本書でその一端を示すことができたのは大変うれしいことである。
 このあとがきを書きながら,不思議な思いにとらわれている。偶然が積み重なって,第6回大会が実施されることとなり,学校臨床心理士サポートの裏方をしていた私に,大会実行委員長,本書の編集の大役がまわってきた。紆余曲折を経て,本書の出版にこぎつけることとなった次第である。
……(後略)

平成14年7月7日 編集代表 鵜養美昭

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