早樫一男/団士郎/岡田隆介編

知的発達障害の家族援助

A5判 240頁 定価(本体3,000円+税) 2002年8月刊


ISBN978-4-7724-0751-9

 知的発達障害は,まさに生涯にわたるテーマである。そしてライフサイクルの節目ごとに,本人も家族もさまざまな問題に直面することになる。にもかかわらず,これまでは早期発見・早期療育が援助の中心であり,それは母親にのみ多大な負担を課すものになりがちであった。しかし,知的発達障害を持つ子どもを家族全体の中で捉え直し,現実生活場面に目を向けてその困難を支え,問題解決力を高めていけるように援助することで,家族は変化する。そしてほんの少しでも,楽になれるかもしれない。そういう方向性でなら,われわれにはもっともっと,できることがある……。本書はそんな思いを出発点に,児童相談所や知的障害者更生相談所などのスタッフが,自らの家族援助の取り組みと工夫を,現場から発信したものである。
 知的障害児者と暮らす家族の理解と具体的な援助技法を解説した第一部,第二部に続き,第三部ではライフサイクルごとに,子どもの成長と課題にあわせた家族援助の事例,さらにこれまであまり語られることのなかった障害と虐待の問題についての事例が提示されている。この他,編者3人による本音フリートーク,知的発達障害の家族の日常におこるドラマをとらえた漫画も収録されている。
 施設福祉から在宅福祉・地域ネットワークへという動向の中にあって,家族援助,さらには地域システムをも視野に入れた取り組みが必須となっている。保健・福祉,教育や医療など,知的発達障害にかかわるさまざまな現場スタッフに,これからの援助の方向性を指し示す一書である。

おもな目次

    第一部 知的発達障害と家族

      知的発達障害の家族理解
      知的発達障害の家族援助のポイント
      知的発達障害の家族を支える社会資源

    第二部 知的発達障害の家族援助技法

      総論:相談・面接の基本
      家族療法:システミック・アプローチ
      描画を利用したアプローチ
      相互援助的親グループ
      心理教育的援助の試み
      地域資源とのネットワークづくり

    第三部 家族援助の実際

    【A 乳幼児期:障害受容と子育て支援】
      総論:乳幼児期の課題と援助指針
      乳幼児発達相談における家族療法的視点の導入
      子どもの療育と家族支援:母親グループ指導のすすめ方
      インターネット・Eメールを利用した療育相談
      障害受容と地域コンサルテーション
    【B 児童期から思春期へ:対人関係にまつわる問題をめぐって】
      総論:児童期から思春期にかけての課題と援助指針
      いじめ・学校不適応:動作法によるアプローチ
      てんかんの不安を抱える母子:家族も育つ
      発達の偏りと収集癖:時薬
      家を飛びだす養護学校生徒:ちょうどいい援助
    【C 青年期:自立にともなう問題】
      総論:青年期の課題と援助指針
      養護学校高等部における不登校・引きこもり:学校の決断を支えて
      就労にむけた援助のすすめ方:援助者を交えた三人での面接
      家庭内暴力ケースの家族面接:家族調整の試み
      青年期以降に受ける知的障害という診断:親グループによる障害受容の試み
    【D 知的発達障害と虐待】
      総論:虐待ケースへの援助指針
      重症心身障害をもつ被虐待児の家族援助:子育て援助と危機介入のはざまで
      祖母からの虐待が疑われた重度障害児:担当者交替をのりこえて
      知的障害家庭に起きた虐待への対応:家族療法的視点からの援助ネットワーク
      体罰習慣がある家族:家族療法をベースにした援助モデル

    第四部 ポストセッション

      【鼎談】知的発達障害をめぐったり,めぐらなかったり……:早樫一男 ,団士郎 , 岡田隆介

    【漫画】木陰の物語:故郷/仮病/無駄遣い/結婚:団 士郎