監訳者あとがき

 エクスナー博士の意欲は留まることを知らず,包括システムは発展し続けている。そのスピードがあまりに早いので,包括システムのマニュアルともいえるA Comprehensive System. vol.1: Basic Foundation(3rd ed.)(1993,未翻訳)ですら古くなってしまった。このワークブックも,1990年発行の第3版が1992年に邦訳されて以来,第4版の翻訳もされないまま,第5版が2001年に発行されてしまった。このままでは,最新の包括システムについて伝える書物がすべて未翻訳のままとなってしまう。
 そこで,2002年にエクスナー博士が来日されたのを契機に第5版を邦訳したのが本書である。なお,原著の正式名は,「A Rorschach Workbook for the Comprehensive System, Fifth Edition」(2001)である。
 本書には,現代ロールシャッハ・テスト体系・別巻『ロールシャッハ・テスト ワークブック』として出版された第3版以降に,包括システムに正式に採用された変数や特殊指標が掲載されている。実施法やコーディングの基準にもいくつかの修正が加えられているし,記述統計の表は体験型や反応スタイルによって細分化され,解釈や基礎研究を行う上で必須のものとなっている。最新の包括システムを理解する上で必読の書といえよう。
 翻訳は10名の訳者が分担して行った。その原稿をもとに最終的に監訳者が原文と照合しながら初めから全訳した。したがって,訳文に不十分なところがあれば,すべて監訳者の責任である。
 邦訳に関して監訳者として心がけた点がある。1つは,原著と同じレイアウトを残したいと思い,強調文字などは,できる限り原著そのままを再現した。2つ目は,エクスナー博士がよく使用し,辞書通りに訳したのでは意味が適切に伝わらない用語等には,監訳者注を付けて理解の助けとなるように工夫した。また,日本語だけでなく原語も示した方が有益と思われる言葉には,訳語の後に( )で原語を入れた。3つ目は,翻訳にあたり原著でどうしても不明な点を,監訳者の一人である中村紀子がエクスナー博士に直接確かめた。
 以上の点に留意し,包括システムの初心者にもわかりやすい邦訳を心がけたが,多くの読者からご指摘をいただければ幸いである。
……(後略)

2002年12月 監訳者一同