「序文」より

 子ども保護機関(CPS; child protective services)を真に改革するためには,相談員,スーパーバイザー,所長,そして一般市民の支持が必要である。また効果のないことを続けるのではなく,「箱の外」から見て,考えることも必要である。真の改革には,良い決定ができるように組織の枠組みを改善するだけではなく,クライアントが最初に出会う行政の人間である相談員の質の向上も必須である。
 2人の著者のうち,インスー・キム・バーグInsoo Kim Bergはセラピスト,コンサルタント,トレーナー,教師として家族,個人,多様な児童福祉の現場に変化を起こす実践を長年にわたって行ってきた。もう一人の著者スーザン・ケリーSusan Kellyは公立児童福祉事務所長であり,マネジメント,方針決定,管理の経験を持ち,さらに効果的なシステムづくりを目指している。私たちは共に現場の相談員が今までとは違う,より良いやり方で調査を行うためのトレーニング・プログラムを開発してきた。相談員が解決構築パラダイムを使って面接・調査・介入をすると,クライアントはCPSと快適に関わることができるようになる。このトレーニングの顕著な特徴は,クライアントが描く望ましい将来を理解し,それに向かってクライアントは何ができるか,何をしてきたかに注意を払い,彼らが少しでも自分の将来像に近づくように励まして支えていくことである。この結果として,相談員にとってもクライアントにとっても敬意のこもった,力づけられる,学ぶことの多い調査ができる。私たちの願いは相談員が達成感をもてることと,クライアントが強く有能になり自らの変化を長く持続させてCPSや他の児童福祉機関に再度関わらないことである。
 本書には公立の児童福祉機関において所長,管理職,スーパーバイザーが解決構築を奨励する文脈や状況を作るための方法を示してある。目標は「クライアント主導のサービス」が常識になることである。本書はマニュアルとして作られたものではない。むしろ,CPSと言う伝統的な「箱」から踏み出して違った考え方をしてみようという呼びかけである。
 本書は進歩の途上で書かれたものである。CPSの仕事は総じて進歩の途上にあると言えよう。到達した所であぐらをかいていてはいけない。私たちは自分で身を守れない子どもや家族への援助を改善する方法をいつも探している。
 本書にこめられた考えをきっかけにして,さらに有効でクライアントに敬意を払うCPSについて話し合われることを願っている。理想郷には子ども保護機関など必要ないだろう。しかし現実世界では家族が子育てに必要なものを手に入れるための手助けを私たちがしなければならない。
 それぞれの家族は資源に富んでいてかけがえのないものである。親は子どもを責任感のある,人に心配りのできる大人に育てたいと思っている。CPSシステムはそうした家族を援助し,その結果彼らがより深い自信と十分な子育て能力を持つよう関わるべきである。本書がこの目標到達への一助になることを願っている。
 本書は,子ども保護に関わる全ての人達に,CPSを現在より前向きで配慮のあるものにするための変化の源になってもらおうというチャレンジの書である。この挑戦は終わったわけではなく,本書は未だ不完全なので,読者の皆さんも私たちにCPS機関での解決づくりのためのビジョンや方策を教えてほしい。
 CPSサービスについて共に学んだ5年間に,家族に善意で接する大変献身的な相談員達に出会った。家族のためになるようにシステムを変えるリスクを負ってくれたCPS所長にも会った。さらに本書に示すアイデアを生み出す助けとなった回復力の強い,有能な多くの家族にも出会った。CPS相談員と家族との交流を観察させてもらっているときに多くの喜ばしい経験をした。このような幸福な時間と貴重な交流のお蔭で本書が誕生したのである。