牛島定信著

人格の病理と精神療法
精神分析,森田療法そして精神医学

A5判 220頁 定価(本体3,400円+税) 2004年4月刊


ISBN978-4-7724-0817-2

 本書は,精神分析療法と森田療法について幅広い知識と豊富な経験を持つ著者の臨床的研究の成果が盛り込まれた最新の論集である。
 前半では,精神医学における精神療法の潮流,多様な病態の相互関係を対象関係論を用いて解き明かし,精神療法のあり方を思考していく中で,個人精神療法,グループワークや社会療法の必要性が論じられ,後半では,摂食障害,境界性人格障害,強迫性障害,解離性同一性障害,社会的ひきこもり,性同一性障害といった病態についての理論と治療技術が解説される。
 社会の変容とともに,神経症水準の病態が人々の生き方や日常生活と密接に結びつき,「今・ここで」の不安や緊張に応えることが心の臨床の最重要課題となってきた。一方,臨床の最前線においては,EBMに裏打ちされた操作的診断と治療法の選択が浸透した結果,精神科医の面接や精神療法の能力低下といった事態が危惧されている。著者は森田療法が培ってきた患者の現実行動への注目を重視するとともに,心の奥にある無意識への気配りが今こそ必要とされているとし,クライエントへのアプローチの基本として,「解釈」(転移解釈),ホールディング,共感,さらには森田療法の純な心,つまりは著者が到達した唯我独尊の涵養といった重要な技法を事例に沿って述べ,治療構造と体系的な訓練システムの必要性を説いている。心の専門家が身につけるべき現実適応のための援助技法を述べた実践的な臨床書である。

おもな目次

    第Ⅰ部 精神療法を考える

      この100年の精神療法は何だったのか
      精神科臨床の今後を考える――DSM診断がもたらしたもの――
      現代精神医学と精神分析
      攻撃的衝動行為の精神病理
      甘え,自己愛,そして森田療法
      森田療法の歴史的変遷
      個人精神療法における非対面的技法の活用
      人には簡単にできることが自分にはできない
      精神医学におけるセックスとジェンダー
      精神医学における精神療法教育の現状と課題

    第Ⅱ部 思春期精神疾患の臨床

      対象関係論からみた新たな精神障害と境界喪失
      境界性人格障害治療の歴史的展望と現状
      強迫性障害の肛門性愛論は今もなお有効か
      最近のひきこもりをどう考えるか
      思春期臨床における解離性障害
      摂食障害の外来治療
      性同一性障害の精神療法
      最近の若い女性にみられるある種の神経症について
      前思春期の内的世界からみた子どもの犯罪
      さまよえる大人たち