「あとがき」より

 軽度発達障害については,最近マスコミ等で取りあげられることが多くなり,また各都道府県教育委員会の主要対策事業の一つとされるようになってきた。軽度発達障害の啓発活動をボランティアとして続けてきた私からすれば,多くの人々が関心を持つようになったこと自体は,大変喜ばしいことである。
 文部科学省等の調査によると,軽度発達障害児は子ども全体の約6%とされている。しかし,本書の執筆者の一人,杉山登志郎先生は,「この数字は教師が『自分が対応や指導をするので調査票に対象児とはしない』と問題を抱え込み,教師負担を多くした数字であり,実際はもっと多い」と平成16年5月,第67回信州LD研究会においでいただいた折りに述べておられ,私もそう思う。日頃,学校現場に呼ばれ,教室を観て歩く機会が多いが,実際のところ子どもの10%ほどはいるのではないかと思われる。
 このため私は10年前から,コミュニティ心理学における「木を観たら森を観る。森を観たら山を観る」の発想で,目の前の軽度発達障害児だけでなく,長野県全体の軽度発達障害児とその関係者にも目を向け,長野県下の子どもに関する機関約2,400カ所に通知を出し,県内外から優れた実践や研究をされている方を招いて講演会やシンポジウムを開いてきた。この信州LD研究会には少ない時で100人,多い時で650人が来場し,今年(平成16年)11月で70回を数える。また,会として啓発交流誌「信州LD研究」3巻をを発行した。これらの資金は,,コミュニティ心理学的活動のアクションリサーチの一環として各地のライオンズクラブの集会を廻りながら,軽度発達障害児への対策の必要性を説いて歩き,毎年金銭アクトが得られるようにしたものに拠る。
 しかし,こうした活動だけではまだ軽度発達障害に対する啓発が十分に進んだとは言えないため,このたびこの会とは別に,私個人の発案により関係機関に無償贈呈することを目的の一つとしながら,本書を発行することとした。
 長野県下の1歳半及び3歳児健診を行う市町村の健康管理課,保健所,保育園,幼稚園,小学校,中学校,盲・聾・養護学校,県教育委員会各課,市町村教育委員会など1,900カ所に1冊ずつ贈呈することを考えた。以上の趣旨に賛同くださり,本書の執筆に,ご多忙の中,ご協力いただいた先生方は,全員信州LD研究会でご講演くださった方々である。
 第2章(宇佐川浩先生)は信州LD研究会の講演記録に加筆修正していただいたものである。第3章(原田謙先生)は原田先生と私と私の妻がスーパーヴァイザーとなって始めた「信州ADHD親の会」(現すまいるクラブ)の講演記録に加筆修正していただいたものである。第6章(杉山登志郎先生)は,長野北信地区学習障害児・者親の会「竹とんぼ」における講演記録であり主催者の承諾を得たものである。第7章(東條吉邦先生)は,後述する「軽度発達障害児のためのチャリティセミナー」の講演記録を加筆修正していただいたものである。第8章(斎藤久子先生)は,斎藤先生の学術論文を加筆修正していただいたものである。第12章(落合みどり先生)は,ホームページに公開された論稿に加筆修正していただいたものである。第13章(降籏・石川道子先生)は,「アスペハート」(全国レベルの親の会であるアスペ・エルデ親の会[現NPOアスペエルデの会]の機関誌)に掲載したものである。第1章と第5章の木村宜子先生,第4章の吉川領一先生,第9章の水野薫先生,第11章の安川健治先生の各論は本書のために書き下ろしていただいたものであり,序論と第10章は私の書き下ろしである。
……(後略)

平成16年 盛夏   編著者