B・W・ウォルシュ,P・M・ローゼン/松本俊彦・山口亜希子訳

自傷行為
実証的研究と治療指針

A5判 280頁 定価(本体3,800円+税) 2005年1月刊


ISBN978-4-7724-0856-1

 リスカ(リストカット)やアムカ(アームカット),タトゥ,根性焼き,皮下への異物挿入――若者に多く見られるこれらの自傷行為の治療は大変困難であるといわれ,教育現場や医療領域の専門家を悩ます問題の一つとなっている。
 本書は,境界性人格,精神病,精神遅滞や自閉症などの多様な臨床例に見られる自傷行為について実証的に検討し,病態の理解と治療指針を示したもので,「自傷学」に関する包括的なテキスト,卓越した必読書といえる。
 著者らは自傷を行動障害として捉え,実証的研究に基づく臨床実践の蓄積から,自傷行為が他の自己破壊行動(過量服薬や揮発性ガスの吸飲,自殺企図)と一線を画すものであると説く。そして,自傷行為の形式について,先行研究の概観を行い臨床課題を明らかにした上で,治療編においては,認知行動療法,行動療法,精神分析的精神療法,家族療法,集団精神療法を解説,さらに著者らが行っている統合的な多面的治療を紹介している。本書で特に詳細に取りあげられているのが,伝染性の問題とその介入法である。これは現在わが国において,インターネットの自傷関連サイトを通じて自傷者が増加している状況からも,特筆すべき論考といえよう。
 自傷と自殺の違い,身体疎外化体験との関連,自傷者本人の発言等,本書に盛り込まれた「自傷」に関するあらゆる臨床的知見は,間違いなく現場で役立つ重要なものであり,対応に苦慮する臨床家にとっても心理面接の技量を向上させるものであろう。

おもな目次

    第Ⅰ部 自傷研究の展望

      第1章 自傷行為とは何か? 第2章 自傷と自殺をいかに見分けるか?(その1)
      第3章 自傷と自殺をいかに見分けるか?(その2)

    第Ⅱ部 臨床における自傷行為

      第4章 青年期における自傷
      第5章 自傷の伝染性
      第6章 境界性人格と自傷
      第7章 精神病における自傷
      第8章 精神遅滞と自閉症における自傷行為

    第Ⅲ部 自傷行為の治療

      第9章 個人療法1――認知行動療法的アプローチ
      第10章 個人療法2――精神分析的アプローチ
      第11章 家族療法
      第12章 グループ治療と自傷の伝染現象
      第13章 多面的治療