日本の読者へ

 本書には1971年から1993年までに私が発表した自殺に関する代表的な論文をおさめている。最初の論文から33年,一番新しいものでも発表してから11年が経った。本書をまとめることによって,自殺予防の専門家として,私がどのような仕事をしてきたかを振り返る絶好の機会になった。もちろん,すべての人々,すべての状況に対して,そのまま完全に応用できる黄金律などないことは私自身よく承知している。読者が本書のどの部分に共感し,どのように日常の臨床に役立てることができるかを考えていただく叩き台となれば,著者としてこれ以上の喜びはない。
 なお,本書を訳してくださった高橋祥友博士に心より感謝申し上げる。高橋先生は1987年から1988年までカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の私の元に留学していた。こう書いていても,診察室で,ロサンゼルス復員軍人病院で,そして私の自宅の中庭で,高橋先生とさまざまな症例について語りあった日々がつい昨日のことのように懐かしく思い出される。
 本書を日本語でも読むことができるようになったわけであるが,この中で取り上げた,自殺の危険の高い人の心理,そのような人々に対するアプローチ法,心理学的剖検,ポストベンションといった内容は,文化の差が存在する以上に,人間という存在にとって普遍的なものであり,日本の読者にとっても十分に役立つものであると確信している。
 自殺の危険の高い人に真正面から向き合い,何とか助力しようと日々努力していらっしゃる日本の読者の皆様に私から祝福を捧げたい。

2004年11月  UCLA 死生学名誉教授  エドウィン・シュナイドマン