山中康裕著著

こころと精神のはざまで

四六判 230頁 定価(本体2,600円+税) 2005年3月刊


ISBN978-4-7724-0860-8

 著者は,セラピストとして,精神科医として,自閉症や少年期・思春期の心理臨床,表現と癒しの関わり,老人臨床,深層心理学など幅広い分野で臨床と研究において業績を残してきた。
 本書は,そうした著者が長年培ってきた風景構成法や著者独自のMSSM+C法をはじめとする表現療法やバウムテスト,内閉論,マンダラなどについて,多くの事例をもとにしながら,自らの臨床的な足跡をあらためて振り返ったものである。また良好に終結した事例だけではなく,自殺自験例を取り上げ,省みる試みなどもなされ,筆者の臨床哲学が凝縮した一冊になっている。
 本書から浮かび上がる臨床や患者・クライエントに対する真摯な態度は,臨床家として生きるということとはどういうことなのかを考えさせられることだろう。心理臨床と精神科臨床を両軸に活動し続ける著者の軌跡は,セラピストだけでなく,精神科臨床に関わるすべての実践家の必読の書である。

おもな目次

    1 こころに残ること

      はじめに
      WPA横浜大会の芸術展示を担当するに際して思ったこと
      心理臨床学と精神医学の間―初回面接での問題点
      コラソン研究会の合宿で討論したこと
      こころと精神の定義について

    2 バウムテスト論考

      バウムテストとの出会いと実践研究の経過
      筆者が出会った初めてのバウム
      さまざまなバウム
      バウムの発達研究
      統合失調症のバウムの特徴

    3 絵画療法論考(その1)―絵画療法の実践経過

      集団実施・個人面接の絵画療法の開始
      筆者が行った絵画療法
      さまざまな絵画との出会い

    4 絵画療法論考(その2)―絵画療法の展開経過

      絵画療法の展開
      集団実施・個別面接・絵画療法の結果の考察

    5 「内閉論」の展開(その1)

      内閉という言葉
      内閉論のはじまり
      「内閉」と「鎖国」のアナロジー
      内閉神経症の内包
      治療論としての展開
      歴史的展望

    6 「内閉論」の展開(その2)―内閉の事例

      内閉の事例
      事 例
      事例のその後

    7 絵画療法論考(その3)―スクリブルからMSSM+C法の開発まで

      はじめに
      ナウンバーグのスクリブル
      ウィニコットのスクイッグル
      中井によるスクイッグルの紹介
      中井による「相互限界吟味法を加味したスクイッグル法」の導入
      筆者によるMSSM法の案出
      筆者のMSSM+C法への発展
      印象深いMSSM+C法の事例

    8 児童神経症の四分極化論と統合失調症など重症事例について

      子どもの神経症の四分極化
      前思春期についての考察
      最近の重症相談事例から

    9 自殺者との遭遇(その1)

      はじめに
      初の自殺者との遭遇
      治ったことを周りが喜びすぎての死
      集中治療室(ICU)の怪

    10 自殺者との遭遇(その2)

      服薬自殺
      縊 死
      餓 死
      おわりに

    11 ユング心理学との邂逅と道行―とくにマンダラ象徴について

      ユングとの出会い
      マンダラとの出会い
      マンダラとは
      ユングのマンダラについて
      筆者が経験した治療場面での諸種マンダラのほんの数例
      本稿におけるマンダラについての考察
      筆者の関わったユングについての論考
      ユング関係の訳書
      筆者が書いたユング関係の著書

    12 忘れられない人々

      恩師たち
      恩師たち―その2、と両親のこと若干
      その後の恩師、同僚、知己