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まえがき

 日々の子どもの心理臨床において,これといった手段をお持ちでない方々はもちろん,すでに解決志向短期療法(Solution-Focused Brief Therapy/以下SFBT)に精通している読者のために,筆者らは本書を著しました。多くの親や,児童福祉司,セラピスト,いろいろな立場のカウンセラー,教師,児童指導員や保育士など,子どもと接する機会のある方々も,本書から得るものがあるでしょう。本書には,子どもやその親と対話するための非常に丁寧な方法について分かりやすく実践的な応用例が述べられていますので,コンサルタント,支援プログラムの計画者,マネージャー,そして子どもとその親に関連するスーパーバイザーなど,すべての方々に役に立つと思います。
 SFBTについてあまりご存知ない読者の方には,このアプローチがいろいろな状況や現場で応用できるツールとなるだけではなく,創造的な解決のアイデアに取り組むための子ども自身の視点やユニークなやり方を受容するという理念が適用されている,このアプローチの有用性がお分かりいただけると思います。
 子ども(特に幼児)への支援に関わった経験があまりない読者の方には,ぜひ子どもと関わってみてください。子どもとどう話せばいいか,何を言うべきか,拒否的な子を扱うにはどうすればいいか,そして子どものユニークな資源を利用し,解決策を生み出すにはどうすればいいかをお伝えしたいと思います。子どもとうまく関われるようになるよう,ゆっくり丁寧にお伝えしていきます。読者の方々は,子どもから学ぶという勇気と好奇心,そして子どもの創造性を見つける意欲を示していただきたいと思います。
 「子どもとの関わり(working with children)」とは筆者らが想定した領域であることを強調したいと思います。それはある一つの場所に至るための多様な道なのです――その場所とは,親子双方が自分の人生に満足し,互いに親密であり,必要に応じてお互いに気遣い助け合う方法を理解し,うまくやっていける場所であり,また,毎日帰るべき安全な関係があることも知っている場所なのです。親子が自分たちのために良い選択ができるよう援助するいくつかの方法について述べたいと思います。
 保育園児・幼稚園児から7歳ぐらいまでを「年少児」と,7歳から12歳を「子ども」と,13,4歳から18歳を「ティーンエイジャー」と,筆者らはやや操作的に定義しています。筆者らは,子どもと関わる際のテクニックのいくつかは,大人に対するものと同様に,うまく用いることができることに気づきました。しかし,どんな子どもや親に対してどの技法がぴったりとうまくいくのかという問題については,臨床上の直観に基づいてセラピストが決めるのだということに注意してください。一般に,このような直感や見識は何百もの子どもの症例を扱う長年の経験によって培われるものです。
 本書は9つの章に分かれています。最初の3章では,子どもやその親と関わるにあたって,SFBTはなぜふさわしく,かつぴったりフィットするのかについてご理解いただけると思います。筆者らは子どもと親についての基本的な仮説を示します。さらに,この仮説が親と子がしっくりとかみ合うためにどのように利用されているのかを示します。たくさんの事例を通して段階的な方法を述べます。大人に対するものと同様の技法を子どもにも用いることに関して,本書全体を通して相違点と類似点が記されています。3章では,多くの臨床の場で用いられる基本的なSFBTのツールについて述べます。SFBTのアプローチに精通しており,様々な状況への適用に慣れている方はこの章を簡単に読み飛ばしていただいてもよいでしょう。しかしながら,このモデルの概念についてよくご存知でも,実際に治療でお使いになった経験があまりない方々にとっては,モデルをもう一度見直すことは役立つかもしれません。
 4章と5章では目標を話し合うことに重点を置きながら,子どもと会う際にどのような準備をしたらよいか,子どもとその家族に関する初期のアセスメントについてどのように考えるのかを説明します。SFBTは目標志向型アプローチですので,目標をどのように話し合って決めていくのかについて多様な方法を示したいと思います。6章では,子どもと関わる際に役立つ,あらゆるツールについて述べています。遊び,想像し,創造的であり,そしてまた大人を満足させてうまくやっていこうとする子どもたちの自然な性向をどのように活用するのか,といったことについて述べます。
 7章では,特別な援助が必要で,しかも関わることが「困難」だと思われる子どもや大人に対してSFBTをどのように適用したらよいかという臨床家の数多くの質問への回答もしています。また,思春期の子どもとの関わりについて一章加えるかどうかをずいぶん考え,仲間と相談もしましたが,親や専門家のためにも,激しくも楽しくもある思春期の特別な試練や大いなる苦難について述べるため,小さな章(8章)を加えることを決めました。
 9章では,臨床家であるあなたがベストを尽くしたのに失敗したと感じる時,または「困難な壁にぶち当たった」時――多くの人にとって厄介で思わしくない治療上の袋小路に陥った時――に何をすべきかを説明します。また,一事例の開始から終結までの治療過程を示します。
 本書では,普通の状況だけでなく,特殊なものも含め,多様な境遇におけるたくさんの事例について述べていますので,子どもやその親,あるいは養育者が専門家からのほんの少しの援助によって困難を克服する驚くべき才能を持っているのを読者にも分かっていただけるでしょう。
 何よりもまず,読者の皆さんには,小さな子どもや年長の子どもと,そして親とともに遊ぶことに対する筆者らの情熱を共有するようになっていただきたいと思います。

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