渡辺俊之著

介護者と家族の心のケア
介護家族カウンセリングの理論と実践

A5判 202頁 定価(本体2,800円+税) 2005年6月刊


ISBN978-4-7724-0874-5

  かつて,介護はごく自然な日常生活の一部であった。しかし現代の家族はライフサイクルの途上で,介護にもう一度向き合うことになる。介護状況の出現により,介護者と家族にはさまざまな感情がわき上がる。そうした感情に対処しながら,「介護家族」として機能するために,家族はその役割や関係性を適応的に変化させなければならない。介護において介護者と家族が体験する感情を深く理解し,心のケアを行うことが,医師,看護師,ソーシャルワーカー,臨床心理士,ケアマネージャー,ホームヘルパーなど,介護に関わるすべての専門職に求められている。
 本書の第Ⅰ部では,高齢者,身体障害者,認知症者,慢性疾患や先天性障害を持つ子ども,精神障害者,ターミナルケアなど,要介護者を抱えた時の介護者と家族の心の状態が詳細に解説され,援助者の対応のポイントが示される。第Ⅱ部では,著者が実践を重ねてきた「介護家族カウンセリング」の理論と技法,地域におけるサポートネットワークの構築とコラボレーションのあり方が,事例を交えて具体的に紹介されている。
 本書のもうひとつの魅力は,著者の心に生き続けているケアの風景を描いた繊細なビネットの数々である。読者はこれらを読むことで,ケアの本質に迫ることができるだろう。

おもな目次

    はじめに

第Ⅰ部 家族が介護を抱えるとき

    第1章 介護者の心理
      1 介護の動機づけ
      2 役割と介護との相互性
      3 介護者と要介護者の組み合わせと心理
      4 依存と介護
      5 否定的感情:介護に影響する八つの感情
    第2章 介護のストレス
      1 介護行為についてのストレス
      2 介護者−要介護者関係からくるストレス
      3 介護者と介護者でない家族メンバーとの関係から生ずるストレス
      4 ストレスへの適応について
      5 介護ストレスが引き起こす体と心の病気
    第3章 介護が提供してくれる肯定的感情
      1 自己評価の高まり
      2 自己感覚の拡大
    第4章 さまざまな介護家族
      1 高齢者の介護家族
      2 身体障害者の介護家族
      3 認知症の介護家族
      4 慢性疾患や先天性障害を持つ子どもの家族
      5 精神障害者の家族
      6 ターミナルケアの家族

第Ⅱ部 介護家族カウンセリングの基礎と実践

    第5章 介護家族を理解するための家族療法の理論
      1 家族とは何か
      2 家族の評価について
      3 介護家族の歴史
      4 家族の構造と介護
      5 家族の役割と対応能力
    第6章 介護家族カウンセリングとは
      1 介護家族カウンセリングを開始した背景
      2 介護家族カウンセリングの対象
      3 三つのシステムへの働きかけ
    第7章 介護者への精神療法
      1 介護者へ関わるときの心構え
      2 介護者の持っている知識と技術の把握
      3 介護者の感情への対処
      4 介護者と援助者の関係性を理解すること
      5 介護者のセルフケア能力を高めるために
    第8章 介護者への家族療法
      1 治療構造について
      2 介護家族に最初に出会うとき
      3 ジェノグラムの作成:ケアの歴史を共有する
      4 介護家族の評価:どんな家族なのか
      5 目標を定める
      6 介入技法
      7 フォローアップ
    第9章 介護家族を支える地域サポートネットワーク
      1 介護家族と地域
      2 地域サポートネットワークの構築
      3 コラボレーションとスーパービジョン
    第10章 介護家族カウンセリングとコラボレーションの事例
      1 介護家族カウンセリングの事例
      2 援助職と家族療法家とのコラボレーション

      おわりに

関連書