日本語版序文

 この序文を書くように頼まれたとき,私たちは世界がますます小さくなりつつあることを実感させられました。それは光栄なことですが,それと同時に,何千キロも離れた方たちと考えを共有する機会に恵まれたことを思うと身のひきしまる思いがします。
 本書を著したのは,クライエントと共に仕事をしていくための新しい言語,新しい語彙を提案するためでした。私たちの仕事の仕方は変化してきましたし,考え方も変わりました。今こそ,それを書き留めてまとめておく時が来たと考えたのです。
 2つの強い願いがありました。1つは,「治療者」というラベルとそれをめぐる病理・欠陥の言説によって不幸を背負った人たちの声がますます大きくなっているのに対して,私たちも声を合わせていきたいという願いです。その願いは非常に強かったので,代替案を提示することにしました。つまり,援助とはそれを通じてそれぞれの人が自分の望む未来を実現することであり,その意味で対人援助の専門家はみずからを「個人コンサルタント」と呼ぶべきだという提案です。専門家が個人コンサルタントを自認するようになれば,その変化は,クライエントおよび専門家共同体に対する振る舞いや関わり方にも反映されることが経験として理解できるでしょう。
 2つめの願いはこうした専門家のアイデンティティの変化と連動するものです。つまり,「ブリーフセラピー」の伝統を,戦略的思考から協働的なあり方へと転換したいのです。目次をご覧になると分かるように,どの章の題名も戦略的ないし欠陥志向の考え方から協働的で楽天的なそれへの移行を表しています。インタビュー,情報,査定,戦略,治療といった言語から,会話,好奇心,応え返し,提案,力づけといった言語へと変化しているのです。そして,私たちは後者の言語がより相手を尊重するものであり,より開かれたものであると考えています。新しい言語によって,クライエントに対してより尊重と希望に満ちた関わりができるようになるだろうと思います。
 本書を刊行してから,私たちはそれぞれ違った領域でこの考え方を実行に移してきました。ジョンは児童虐待とDVの領域で仕事をしており,これまで伝統的に専門家主導で権威的に進めてきたものを,クライエントの嗜好と関心をめぐる協働的な関係にしていくにはどうすれば良いのかを模索しています。
 ジェーンは,教職とソーシャルワーク教育の世界でこの考えを展開させています。シカゴにあるノースイースタン大学のソーシャルワークの教授として実習カリキュラムを変更し,変化についての新しい言語が活かせるようにしています。もっとも強調したいのは,好奇心,理解力,創造性,力づけなどを活用して学生の力を伸ばせるように教え方を変えたことです。学生がみずから好奇心を育て,自分自身の学習や実践について振り返りができるような環境を創ろうとしてもいます。
 私たちは最初の著書『短期療法における解決焦点化』の結論部分で,この本が触媒となってたくさんの会話が始まることを望んでいる,と書きました。それ以来,たくさんの反響があり,世界中でたくさんの会話ができました。そして再び,そういう機会を得ることができてとても嬉しく思っています。本書がさらに多くの豊かな会話をもたらすことを願って止みません。

ジョン・L・ウォルター
ジェーン・E・ペラー