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まえがき

 「電話相談」という言葉はすでにこれまで広く世に知られてきた。事実,それは人々のさまざまな要請に応えるものとして,幅広い領域で実践されてきている。そして,これまでも電話相談がもつ特質についてはいろいろ検討され,電話相談学会も設立されている。
 一方,携帯電話の普及率の飛躍的増加,テレビ電話等々の機能の多様化,メール通信の普及など,メディアが大きく変貌しつつある現在,電話相談が心理的援助のためのツールとして持つ意義,特質について基本を確かめ,その上で,それが心理的援助のツールとしてその意義を発揮していくための課題について多面的に掘り下げて考えることが是非必要でであろう,と企画されたのが「臨床心理学」誌上の連続講座・臨床ゼミ『電話相談の考え方とその実践』である。
2003年1月刊行の第3巻第1号(通巻13号)に始まり,2年余にわたる連載を経て,第5巻第1号(通巻25号)の座談「電話相談の今後の課題」をもって連載を終了したので,若干の加筆を行って,ここに一書として纏めることとなった。

 本書を企画をするにあたって,豊富な実践経験を持たれ,日本臨床心理士会の理事として,電話相談の企画運営に携わってこられた津川律子先生に御協力を御願いした。快くお引き受け頂いたことももちろんであるが「電話相談はともすればこれまで,マイナーなものと考えられがちであったが,実際にはその活用に際して,必要な要因を配慮し,電話の受け手が熟達すればするほど,それは有意味かつ有効なツールである。面接の場合に勝るとも劣らぬアセスメントの実力,想像力,瞬時の総合的判断力,活用できる知見の集積,そして基底には人の必然性に想いを巡らせる惻隠の情が求められる」という点で二人の見解はたちどころに一致し,滑らかに企画が運んだのは,有り難いことであった。
 本書では,第一に,わが国における電話相談の展開の跡をたどりつつ,現在,臨床心理士が関わっている電話相談領域の主なものについて,現状とその課題を,それぞれの領域で活躍されている方々に詳述して頂いた。そして第二に,領域を異にしながらも,電話相談に関わる場合,通底して課題となるアセスメントの問題,および相談者の養成訓練について,それぞれの執筆者に,なにが求められているかを明らかにして頂けたと思う。第三に,変容発展途上にあり,新しく実用化されつつあるツールについて,その可能性と課題について検討を行っている。
 通読して頂くと,電話相談は実は幅が広く,有効性も携わる人の力量如何によって,非常に有効な援助の手段である反面,奥が深く,これに携わる個人の資質,そして目的と需用,運用可能性とを総合的に捉え,運営していくことが必要であるということ,その際に求められる要因についても,問題提起できたのでは,と思われる。まさに電話相談とは,それに携わる人が日々意識を新たにし,研鑽を怠らないことによってこそ,息吹を保ち,その力を発揮していくものものなのだと言えよう。
 なお,わが国での電話相談の創生の大役を果たされ,心理臨床家が行う電話相談と時にコラボレーティヴな活動をご一緒させて頂いている「いのちの電話相談」の斎藤友紀雄先生,松村隆先生にはご多忙の中,御協力下さり,貴重なご意見を下さいましたことを深謝致します。

……(中略)……

本書が電話相談に携わる方々お役に少しでもたち,さらに今後の電話相談の発展に意味をもち,そして電話相談に直接関わらない方々にも,電話相談の意義について理解を深めて頂く上での何らかの参考になれば,まことに有り難く思う。

平成17年 梅雨の晴れ間に 村瀬嘉代子

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