デイヴィッド・ナイランド著/宮田敬一・窪田文子監訳

ADHDへのナラティヴ・アプローチ
子どもと家族・支援者の新たな出発(たびだち)

A5判 220頁 定価(本体3,200円+税) 2006年1月刊


ISBN978-4-7724-0898-1

 子どものころにワクワクしながら読んだ『ハックルベリー・フィンの冒険』。好奇心や勇気,冒険心の塊のような主人公ハックルベリーが現代に現れたら,彼は困った子としてADHDという診断名をつけられてしまうのだろうか……。そんな発想を基底に,今日のADHD診断の急激な増加や,数多く行われる安易な投薬治療の現状に,鋭く疑問を投げかける書である。
 著者ナイランドは,ナラティヴ・アプローチに基づいて,「ADHDを子どもから切り離す」「ADHDの影響を描き出す」「例外に着目する」「子どもの能力を取り戻す」「新しい物語を語り,祝福する」という5つの段階を「スマート・アプローチ」と名づけ,薬物療法が色濃いADHD神話に切り込む。その過程で,一人ひとりの子どものもつすばらしい能力や才能を見抜き,それをときにユーモラスな,ときに思いやりに満ちた,子どもや親との真摯な対話によって導き出すのである。さらに,周囲の大人が子どもの力を育て伸ばすための,家庭や学校における環境づくりの提案は,豊富な臨床経験を基にさまざまな創意工夫に溢れている。
 落ち着きのない子,注意散漫,大人の言うことをきかない反抗的な子,学校嫌い……といった,子どもの行動上の問題をどう考え,実際にどう対処していくのか。それらを具体的に説き明かす本書は,多くの事例も収載され,著者ならではの方法とアイディアがつまった一冊である。子どもと家族,教師,そして子どもの援助者にとって,大いに役立つものとなろう。

おもな目次

    第Ⅰ部 批判

      1章 導入──ハック・フィン,チャド・ジェイジー医師に会う
      2章 不可思議な科学──ADHD診断の実態

    第Ⅱ部 解決

      3章 スマート・アプローチ──概観
      4章 ステップ1──ADHDの問題を子どもから切り離して考える
      5章 ステップ2──子どもや家族に対するADHDの影響を描き出す
      6章 ステップ3──ADHD物語の例外に着目する
      7章 ステップ4──ADHDと診断された子どもの特別な能力を取り戻す
      8章 ステップ5──新しい物語を語り,祝福する
      9章 スマート・セラピーのまとめ──始まりから終わりまで
      10章 学校でのハック──教室におけるスマート戦略
      11章 ハックがスマートを受けてスマートになる──ハックとデイヴィッドとの会話

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