あとがき

 やっとここまでたどり着きました。全国に名前の知れた出版社から本を出すなどという思ってもいなかったことが,現実のものとなります。もちろん,「あとがき」を書くのははじめてのことです。なので,まず,あとがきに必須なことからはじめます。
 とびっきり素敵な近所のおばさんみたいなインスー・キム・バーグ先生と,昨年9月,旅先のウィーンであまりにも早く,突然,お亡くなりになった高僧のようなスティーブ・ディ・シェザー先生に限りない感謝を捧げます。
 福岡のワークショップではじめてインスー先生のお姿を見た時は,本番前に機材のチェックをしているワークショップのお手伝いの方だと,ほんとうに勘違いしました。サックスを吹くというディ・シェザー先生は大阪のワークショップでの懇親会の時,モンク(ジャズピアニスト)が好きだが,最近は,料理の方が面白いと,通訳の方を煩わして聞いた私に,あのしわがれ声で,ゆっくり丁寧に答えてくれました。SFAの姿勢を身をもって示してくださったお二人に重ねて深い感謝を捧げます。
 はるばる北海道まで来て私たちを指導してくださった福岡の磯貝希久子先生,高松の玉真慎子先生,東京の森俊夫先生に深く感謝します。特に,磯貝先生,玉真先生は,インスー・キム・バーグ先生の著書とビデオを,すばらしい日本語に翻訳して下さっていて,SFAを学ぶ過程で私たちがどれだけお世話になったかはかりしれません。
 (……中略……)
 書きたいことは,まだまだいっぱいあるのですが,紙幅は残り少なく,どうしても書いておきたいことに移ります。
 この本は,北海道の「解決のための面接研究会」7年間の勉強会の成果の一端をまとめたものです。20人の多士済々のスタッフ(巻末の紹介を見て下さい)と勉強会に参加してくださった延べ2千人を超える方々との勉強の成果です。私たちの勉強会は,SFAを理解すると同時に臨床現場で有効に使えるようになることをめざして,毎月,全員参加のロールプレイを繰り返してきました。SFAに限らず,面接は実践の術ですから,当たり前のことともいえますが,全員参加のロールプレイにこだわっている勉強会というのもまれでしょう。この本には,そのような勉強会の性格がよく反映しています。
 理論をおさえつつも経験的な解説を試みた第2章,第4章は,臨床現場にいる方にとって,感覚的に「わかる」ものになっているでしょう。第3章と第6章のロールプレイの解剖は,大して上手くもないセラピストの面接(恥をさらしているのは私です)にもかかわらず,勉強会メンバーの解説,検討が,徹底して実際にSFAを使っている人の視点から行われており,SFAを学ぼうとしている方々にとって,とても実践的な内容になっていると思います。第1章の解説は極めて簡潔ですが,SFAを使っている深い体験に根ざした解説で,読み返すたびに新しい発見があります。勉強会メンバーがSFAにひかれたわけを話している第5章も,それぞれの現場体験が語られていて,多くの方の「そうだよ,そうなんだよね」という共感を得られるでしょう。
 私たちは,この本で,さまざまな対人援助の現場にいる方々をSFAの入り口までご招待することをめざしました。そのために,格好をつけず,自分たちの等身大の姿を晒しています。SFAを使うと,セラピストもクライエントもみんな元気が出ることを実感している私たちとしては,この本を読んだ方が,少しでも元気になって次の臨床現場に臨み,クライエントを含めた周りの方々も元気になることを切に願っています。