J・D・リヒテンバーグ,F・M・ラクマン,J・L・フォサーギ著/角田 豊監訳


自己心理学の臨床と技法
臨床場面におけるやり取り

A5判 310頁 定価(本体4,600円+税) 2006年7月刊


ISBN978-4-7724-0921-6

 著者の3人は,コフート,ストロロウに続く自己心理学派の中心人物であり,特にリヒテンバーグは,スターンと共通した立場を持つ乳幼児研究で知られ,その成果が本書の「動機づけシステム理論motivational system theory」に結実している。
 本書の最大の特徴は,幼少期に性的虐待を受けたナンシーという女性との10年近くに及ぶやり取り(第3章)の詳細な逐語記録から,分析者の内的思考の変遷や,クライエントの心の動きが生き生きと述べられている点である。さらに「共感」「自己対象体験」といった自己心理学の鍵概念を用いていかに治療をすすめていくか――いかに「治療作用therapeutic action」につなげていくか――を,10の技法の原則に基づいて描き出した点が本書のもう一つの特徴である。そのほかにも,クライエントの「感情affect」を綿密に取り上げること,夢の解釈など,全編にわたって実際に役立つ知見が数多く紹介されている。
 本書はクライエントの自己感に焦点を当てることによって,機械的なマニュアルではなくアートとしてのセラピーの側面を強調した,自己心理学の技法についてのプラクティカルな指導書である。

おもな目次

    第1章 イントロダクション―精神分析技法の歴史と本書の位置づけ―
    第2章 事例の要約と,生の体験が患者の自己と動機づけシステムに及ぼす影響
    第3章 臨床場面におけるやり取り―1983, 1985, 1987, 1989, 1990―
    第4章 技法の10原則
    第5章 感情体験―臨床場面におけるやり取りの中でもっとも重要な道筋―
    第6章 転移―いかに理解し作業するのか―
    第7章 夢―睡眠機能がもたらす探索への特別な機会―
    第8章 性欲,好意,そして性愛化―性的虐待の治療に含まれていること―
    第9章 治療作用の様式と,私たちが勧める技法でどのように治療作用が促進されるか
    第10章 論争的な質問に対する返答