序文

上田 茂 (国際医療福祉大学教授,前国立精神・神経センター精神保健研究所所長)

 わが国の精神保健福祉施策については,平成16年9月に厚生労働省から「精神保健医療福祉の改革ビジョン」が提示されましたが,「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な方策を推し進めていくため,国民各層の意識の変革や,立ち後れた精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を今後10年間で進めることとしています。
 約7万人の受入条件が整えば退院可能な者の社会復帰を図るためには,精神病床の機能分化を進めるとともに,地域の中に,住まいと生活支援のメニューや,活動のメニューの提供等,地域ケアの体制を整備することが重要であります。と同時に,これまで全国各地で広く実施されて,精神障害者の地域生活の維持に役割を果たしてきた精神科デイケアについても,地域ケアの重要な機能として,その充実が強く期待されています。
 一方,精神科デイケアについては,精神科デイケアの成果・評価,診療報酬の見直しや,他の保健医療福祉サービスとの役割分担・連携の問題等をめぐって,そのあり方が議論されています。
このように地域生活中心の保健医療福祉や精神科デイケア等について,関係者の間でいろいろな論議が行われている時に,本書が出版されることは大変意義深いと思います。
 この本は,平成17年7月に国立精神・神経センター精神保健研究所で実施された精神科デイケア課程研修をもとにまとめられていますが,この研修を担当された安西信雄先生をはじめ,事務局の皆さんや講師の方のご熱意と,研修生の方の積極的な参加により,大変有意義な研修になりました。そこで,わが国における精神科デイケアをさらに発展させるために,もっと多くの方にこの研修の内容を伝えたいとの思いから,今回の出版が企画されました。講義や症例検討,討論等から構成されていますが,精神科デイケアを実施するうえで,また,精神科デイケアを考えるにあたって,きっと役に立つものと思います。
 わが国の精神保健福祉の向上のために,「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で提示されたさまざまな保健医療福祉サービスが着実に広く実施されることが問われていますが,精神科デイケアが地域ケアの中で大きな役割を果たすよう,関係者の皆さんの熱心な取り組みを期待しています。本書が関係者の皆さんに少しでも役立つことを願っています。