はじめに

 今日,学校においては,ADHD(注意欠陥/多動性障害),LD(学習障害),高機能自閉症の子どもたちが通常学級にいて,担任教師にとっては,彼らの指導法に窮し,困惑しているのが現状でしょう。特にADHDのように,子どもに行動面の問題があると,他の子どもへの影響もあり,教師には授業を行うこと自体がたいへんな負担となるでしょう。しかし,個性のある軽度発達障害児と他の子どもたちが人生の早い時期から出会い,共に体験を共有できることは,障害児と障害を持たない子どもとの両者にとって,相互理解にとても役立つ,有意義なことであると思われます。しかしそのためには,学校と関わるすべての人たち,とりわけすべての子どもの保護者の理解が大切です。
 そして学校教育においては,何よりも障害児とうまく関われる力量が教師に求められています。小・中学校には,特別支援教育コーディネーターが配置されますが,彼らの養成研修だけでなく,担任の研修も必要でしょう。担任には,軽度発達障害児を理解するだけでなく,子どもの問題となる行動を,まわりの子どもたちや保護者と協働して改善していく技術も必要です。その意味では,問題の解決を目指して,子どもに変化を喚起するブリーフセラピーの考えと技法が特別支援教育分野に何らかの貢献ができると思われます。
 本書の出版にあたり,ブリーフセラピー・モデルを使い,発達障害児の心理臨床をしている先生,スクールカウンセラーとして学校に入り,発達障害児を担当している教師や発達障害児の保護者のコンサルテーションを積極的にしている先生,さらに,実際に特別支援教育コーディネーターとして,特別支援教育の最前線で活躍している先生方に特に執筆をお願いしました。本書は,障害児への具体的な支援の在り方をわかりやすく,しかも効果のある方法を提示しています。本書が,教師,スクールカウンセラー,発達障害児の心理臨床をしている専門家の皆さんのお役に立ち,子どもたちと保護者の支援に少なからぬ貢献をすることを願っています。

平成18年5月 新緑を迎えて 宮田敬一