レノア・テア著/西澤 哲訳

恐怖に凍てつく叫び
トラウマが子どもに与える影響

A5判 440頁 定価(本体5,800円+税) 2006年9月刊


ISBN978-4-7724-0930-8

 1976年7月,カリフォルニア州農村部の町チョウチラで,26人の子どもたちがスクールバスごと誘拐されるという前代未聞の事件が起こった。事件発生から2日後,子どもたちは生き埋めになっていた穴から自力で脱出し,事件は無事解決を見た,と誰しもが思った……。しかし,レノア・テアはこうした体験が子どもの心に何らかの「傷」を残しはしないかという懸念を抱いてチョウチラへと向い,その後数年にわたって誘拐事件に巻き込まれた子どもたちの人生を追うことになる。
 本書は,この「チョウチラ・スクールバス誘拐事件」の調査研究を縦糸に,猛犬に襲われ首を喰いちぎられる被害にあった子ども,ヒルガード保育園における集団性的虐待事件に巻き込まれた子どもなど,トラウマ性の体験をした人々の夥しい「物語」を横糸にして編み込まれた,複雑で精緻なタペストリーである。さらに,膨大な量の文学や映画,芸術作品を貫くトラウマ性のテーマを探索することにより,他の専門書群を圧倒する質を備えた比類なき1冊となっている。
 トラウマを受けた子どもの精神療法の第一人者であるテアは,子どものトラウマの世界の扉を開き,治療的接近を探究するとともに,それがPTSDなどの一疾患を超え,時をも超えて,彼らの「生き様」を変えてしまうような強力な磁力を帯びる可能性を分析している。子どものトラウマ研究の原典と言うにふさわしい名著である。

おもな目次

      序   章
      謝   辞

      第1章 子どものトラウマの世界の扉を開く

    第1部 子どもの精神的トラウマにともなう情緒

      第2章 戦   慄
      第3章 憤   怒
      第4章 否認と麻痺
      第5章 未了の悲哀
      第6章 恥 と 罪

    第2部 子どもの頃の精神的トラウマの作用

      第7章 誤   認
      第8章 時間は歪む
      第9章 トラウマの記憶
      第10章 学校の成績とファンタジーの仕事
      第11章 繰り返す夢

    第3部 子どもの頃の精神的トラウマと行動

      第12章 ポストトラウマティック・プレイ
      第13章 ポストトラウマ性の再現

    第4部 子どもの頃の精神的トラウマの治療と伝染

      第14章 治   療
      第15章 トラウマ性の出来事との「接近遭遇」