M・ボストン,R・スザー編著/平井正三,鵜飼奈津子,西村富士子監訳

被虐待児の精神分析的心理療法
タビストック・クリニックのアプローチ

A5判 230頁 定価(本体3,400円+税) 2006年11月刊


ISBN978-4-7724-0942-1

 近年,身体的虐待・性的虐待のみならず,情緒的虐待が一生涯にわたって子どもに与える心の傷について,心理療法の現場においても関心が高まってきている。
 本書は,タビストック・クリニックを中心とした臨床家たちが,虐待を受けた80名にものぼる子どもたちの臨床例をもとに行ったワークショップの成果を結集したものである。「投影同一化」「妄想・分裂ポジション」「包容/包容すること」など,クライン派精神分析の基本概念が臨床例の中で巧みに展開されており,読者はそこから被虐待児の内的世界の深奥へと迫るアプローチの理論と技法の詳細を読みとることができる。
 また,優れた臨床家たちによる被虐待児への精神分析的心理療法の臨床例からポスト・クライン派精神分析の概念・技法を理解することができるという点でもきわめて有用である。クラインの理論や技法を越えて育まれてきた著者らの実践は,児童精神分析の研究史の流れにおいても,ひときわ興味深い。クライン派精神分析の流れをたどる際には,巻末に付した用語解説が理解の一助となろう。
 本書は,被虐待児のみならず子どもの心理療法に携わるすべての人々にとって,精神分析的心理療法の適応の拡大と深化を探求した良書である。

おもな目次

    第1章 タビストック・ワークショップ:概要 メアリー・ボストン
    第2章 落ちること,落とされること
    第3章 くっつくこと―公的保護の下にある女の子が呈しやすい問題―
    第4章  見捨てられること
    第5章 性と攻撃性の関連性
    第6章 心理療法における技法上の問題 メアリー・ボストン
    第7章 心理学的アセスメント エバ・ホームズ
    第8章 「僕はダメだ,役立たずだ,考えられない」
    第9章 考えることと学ぶことの難しさ ジアンナ・ヘンリー
    第10章 施設から家庭への移行 ロレーヌ・スザー
    第11章 里親のもとで育つ―ある少年の苦闘―
    第12章 家族の輪の崩壊と再構成 ロナルド・ブリトン
    第13章 公的保護の下にある子どもたちについて共に考える ジョアン・ハットン
    第14章 フィールド・ワーク―里親家庭への初めての訪問― ブライアン・トラックル
    第15章 被虐待児とのかかわりにおいて喚起される感情 シャーリー・ホクスター