下坂幸三著(中村伸一・黒田章史編)

心理療法のひろがり

A5判 288頁 定価(本体4,200円+税) 2007年3月刊


ISBN978-4-7724-0954-4

 著者は,個人療法から発展した精神療法だけでは境界例や摂食障害の患者の治療には限界があることを,世界に先駆けていち早く見抜き,家族を交えた心理療法にさまざまな工夫を凝らしてきた。40年以上にわたり多大な実績を残してきた著者が,最後に企画していた二冊の論文集。その第一冊目が本書である。
 患者の純粋経験に近づくこと,患者・家族の話をなぞるように聞くこと,患者・家族・治療者,三方の意見を束ねること……。長年の経験から生まれてきた技法がちりばめられた臨床を,著者は「常識的家族面接」と称し,家族こそが患者の支えであり,家族一人ひとりを尊重して協働治療者とみなし,家族と患者に寄り添って「応援」することが治療者の役割であるとした。このような,技法というよりも「作法」と呼ぶにふさわしい心理療法のありようは,著者の東洋思想への興味と深い理解をも映している。
 本書は著者の「作法」に則った臨床面接の様子をつまびらかにし,その真髄に触れることができる一冊である。家族面接,とりわけ摂食障害や境界例患者に取り組む治療者には必携の書となろう。

おもな目次

      はじめに―「聴き入る」ことをめぐって―

    第一部 心理面接の原則

      第一章 家族を含めた心理療法の基本
      第二章 我観ブリーフ・セラピー
      第三章 精神病理学的接近と心理療法的接近の協働
       エッセイ 親のメンタルヘルス以前―青年期患者の場合―
      第四章 私の家族面接―フロイト思想の一展開―
      第五章 家族療法における私の技法の基本
      第六章 現代における家族療法の意義
      第七章 心理療法中におこる身体病罹患と怪我の意義
      第八章 摂食障害治療への入り口
      第九章 道元の思想と心理療法
       エッセイ 父親面接雑感

    第二部 心理療法の経験

      第一章 思春期の危機
       エッセイ 親不孝通り
      第二章 強迫神経症
      第三章 強迫神経症の臨床―精神分析的心理療法の立場から―
      第四章 不安神経症の特徴と短期心理療法
       エッセイ 「地道」ということ
      第五章 心身症と家族
      第六章 「家庭内暴力」に対する応急の対応について
      第七章 「少年事件」の前段階
      第八章 摂食障害者の描画と自己認識
       エッセイ 散歩のできない人たち/本との出会い 「誰が風をみたか」