監訳者あとがき

 私が本書に出会ったのは,3年前,乳幼児精神保健について勉強したいと思い立ち,ワシントン大学看護学部教授(すでに定年退職した)だったKathryn Barnard博士に相談したところ,日本にいながらにして勉強できる,通信教育による乳幼児精神保健講座を教えてもらったことがきっかけだった。結局,その講座を終了することはできなかったが,テキストとして使用されていた本書を手にし,ぜひ和訳し,日本の多くの専門家に読んでもらいたいと考えた。そしてさらには,私が教鞭をとっている大学院の教材にしたいと考えた。私は大学院における教育とともに,NCAST研究会というグループを主宰し,乳幼児とその家族,特に母親との関係性や相互作用に関する研究や実践活動を継続してきている。その研究会のメンバーと,本書を和訳し,世に出すことで,より多くの乳幼児と家族のために仕事をしている専門家に,Selma Fraibergが始めた乳幼児精神保健活動の実際を知ってもらいたいと願った。さらに,それを看護職をはじめとした,医療・心理・福祉・教育等の多くの分野の専門家と共有し,わが国特有の文化や事情に基づいた実践活動に,ひいては新しい乳幼児精神保健の研究や理論に発展させることを望んだ。
 本書の和訳に取り組んだ仲間の名前と略歴は本書の最後に記載されているので,改めて述べる必要はないが,それぞれが,私や他のNCAST研究会メンバーとともに,実践・研究活動をしながら,上述したような新しい乳幼児精神保健の研究や理論を創造する活動をしている。本書を通して,そうした活動が広がり,健やかな乳幼児と家族の生活に寄与できることを願っている。
……(後略)