あとがき

 本書は同じ編者による『非行臨床の実践』(金剛出版,1998年)の姉妹編に相当する。前著が出版されてから早いもので10年近くが経過しようとしている。その問,2000年には17歳による事件が相次いで起こり,いわゆる「17歳問題」として世間の関心を集めたことは記憶に新しいところであり,同年には少年法が改正された。その改正の一部には,刑事罰適用年齢が16歳から14歳へと引き下げられたこと,故意に人を死亡させた事件で逮捕され,家庭裁判所に送られた16歳以上の少年は,原則検察官送致とするなどが含まれた。さらに本年(2007年)には,少年法のさらなる改正がなされ,少年院送致の下限年齢を14歳以上から,おおむね12歳に引き下げるなどの内容が含まれている。
 このように少年をめぐる状況の変化は著しい。もちろん少年のみならず,成人犯罪者の状況も変化している。本書で取り上げられているが,2005年7月には「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」が施行されたこともその一部である。
 このような状況の中で,少年や成人の再犯防止に向けた心理的援助がわが国では具体的にどのようになされているのかを詳しく知ることの意味は極めて大きいと思われる。そのような意味合いもあって,今回は本書のタイトルを「非行」も含めて,「犯罪心理臨床」とした。また,直接には関係しないが,虐待してしまう親の問題や,犯罪被害者への支援の取り組みは,犯罪臨床を考える際の重要な視点を提供するものと思われる。
 執筆者の多くが現職の公務員としてその機関の中枢を担っている方々である。現場の最新の取り組みについて執筆者の経験とそれを支える理論について紹介していただいた。執筆に際しては所属機関との調整など随分ご苦労されたのではないかと想像される。それにもかかわらず,執筆を快く引き受けていただき,高度な専門性に裏打ちされた論文を執筆いただき感謝の気持ちで一杯である。抽象的な記載を避けるために,プライバシーの保護には充分な配慮をしつつ,現場の臨場感あふれたケースの紹介も豊富に取り入れていただいた。校正刷りを読み終えた今,犯罪心理臨床の世界は広く,奥の深い世界であることを改めて感じた次第である。
本書が心理臨床に携わっている方々のみならず,非行・犯罪の処遇に関心のある方々に是非読んでもらいたいと思う。
……(後略)

2007年6月  村松 励