『医療専門職のための研究論文の読み方
批判的吟味がわかるポケットガイド』
を推奨します

 Evidence-Based Medicine(EBM:根拠に基づく医療,エビデンスに基づく医療)が日本に紹介されて10年以上が経過した。その間,医療費削減のためのお題目にされたり,個性無視の医療の代名詞にされたり,はてはエキスパートたちが自分の主観的意見を主張するための看板に使われたりもしている。
 しかし,EBMの本態は一人一人の患者様に最も適合する診断,治療,予後予測を可能にするように最適(最もその患者様に当てはまりやすく,かつ科学的に正しいと考えられる)グループデータを利用するための方法である(Furukawa, Guyatt & Griffith, 2002)。EBMはまだまだ発展途上にあり,医学界が人類の健康ないし疾病について最適なデータを提供できる仕組みができるように年々工夫が積み重ねられている(Furukawa, Jaeschke, Cook, et al, in press)。
 本書はこのうち,「科学的に正しい」かどうかを見分ける具体的な方法,すなわち批判的吟味(critical appraisal)の方法をコンパクトにまとめた手引き書である。
 本書が最も優れているのは批判的吟味のチェックポイントを「本質的な問い」と「具体的な問い」に分け,忙しい臨床家でもそれこそポケットに入れた本書を参照しながら進めることができるように構成されている点である。また,解説が要を得ているので,忙しい臨床家だけではなく,人間に関する介入についての根拠,エビデンスを見極めたいという人々にとって非常に良い導きになるであろう。
 本書を契機に,医学界のみならず人間に介入する職種のすべてで,対象者に最も適合しかつ科学的に正しいデータに基づく介入が評価され,また導入されるようになることを願っている。
(文献略)

名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野教授  古川壽亮