おわりに

 振り返ってみると,筆者がカウンセリング(教育相談)を学びはじめてから40年以上の歳月が過ぎ去っている。よく続いたものだと思う。当時,教職についていたにもかかわらずカウンセリングを本格的に学びたいと考えて,毎週一回ずつ宇都宮から東京に通い始めたのが,20代の後半のことである。中学3年生の担任だった筆者のわがままを聞いて下さった学校長と同僚の皆様に対しては,感謝しすぎることはない。まだ新幹線もなく帰りは上野駅から夜行列車に乗って帰宅したことを覚えている。
 その講座で出会った故小林純一先生(元上智大学教授)に師事し,先生がお亡くなりになるまでの長期間にわたってご指導いただいた。また,小林先生の研究会では神保信一先生(明治学院大学名誉教授)にも出会い,ひとかたならぬお世話になった。お二人との出会いが,私のカウンセリングの礎となっている。
 また当時,同研究会でご一緒した渡辺三枝子氏(筑波大学教授)と橋本幸晴氏(関東学院中・高校カウンセラー)とは,現在もカウンセリングを学び合う友人としてお付き合いいただいている。その後,教育委員会を経て教育研究所で15年間教育相談を担当した。その時の数多くのクライエントとの触れ合いの中から私のカウンセリング観が次第に構築されてきた。
 そのようにして出来上がってきた筆者のカウンセリング観を著したものが本書である。本書は,以前刊行した「相談室ものがたり」(日本文化科学社)を改訂増補したものである。前著が刊行されたから17年余りの年月が経っている。この間,わが国のカウンセリング界においては,いくつかの大きな出来事があった。その一つは1995年から行われた文部省(当時)によるスクールカウンセラーの公立学校への導入である。これは従来からの学校カウンセリングのあり方を大きく変える出来事であった。また,2003年から文部科学省により開始された特別支援教育は,学校におけるカウンセリングのあり方を見直す糸口となった。
 個人的にも,この期間にはさまざまな出来事があった。最も大きなものは二男が急逝したことである。これを契機に,筆者は生や死について再度考えさせられた。本書にも,そのような筆者の考えを新たに付け加えてある。これは息子の死から学んだものである。

 本書の刊行に当たっては,多くの方々のお世話になった。友人の小林幸正氏(栃木県総合教育センター)には,前著と同様に本書の表紙や本文のカットを描いて頂いた。おかげで本書にやわらかな雰囲気を付け加えることができた。お忙しい折にもかかわらず,快くお引き受けいただいたことに感謝している。なお,最終校正の段階で,筆者が目の病気を患い視力が低下したため,日本LD学会事務局の森田裕子,川上奈緒子,赤田みずき,馬場洋子氏に大変お世話になった。休日や時間外の遅い時間に校正を手伝っていただいたおかげで,無事本書を刊行することができた。
……(後略)

2008年1月   下司 昌一