飛鳥井望著

PTSDの臨床研究
理論と実践

A5判 176頁 定価(本体3,000円+税) 2008年8月刊


ISBN978-4-7724-1038-0

 精神科医や心理援助職が出会うPTSD(心的外傷後ストレス障害)はつねに,保健医療や心理臨床の既定の境界線を超え,被害者と加害者ないし被災者と過失責任者とのかかわり,補償制度や司法制度,公的および民間の援助組織と背中合わせにある。そのなかで精神科医や心理援助職は,「科学的なエビデンスと社会的な使命をいかにして共存させるのか」という問いを,絶えず投げかけられる。
 本書はこの問いを受け,阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件,和歌山毒物混入事件,惨事ストレスなどを取りあげながら,臨床疫学,日本語版診断尺度作成,エビデンスに基づいたPTSD治療法としての薬物療法や認知行動療法,トラウマ記憶の脳科学,遺族の複雑性悲嘆治療の試み,偽記憶をめぐる司法論争など,文字通り複眼的にトラウマティック・ストレスをめぐる諸問題にアプローチする。
 1995年の阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件の衝撃以後,近年の通り魔事件や大災害,重度事故まで,PTSDへの社会的関心がかつてなく高まっている。本書は,急成長をはじめた日本PTSD研究の創成期から臨床研究の第一線でリードしてきた著者の12年間の軌跡であり,「日本におけるPTSD研究勃興期の記録」そのものでもある。

おもな目次

    第1章 心的外傷概念の歴史的変遷とPTSDの誕生
    第2章 PTSDの臨床疫学
    第3章 PTSDとうつ病
    第4章 PTSDの症状評価
    第5章 CAPS(PTSD臨床診断面接尺度)日本語版の尺度特性
    第6章 PTSDの診断基準をめぐる問題点
    第7章 阪神淡路大震災復興期のストレス要因
    第8章 地下鉄サリン事件被害者の心のケア
    第9章 和歌山毒物混入事件被害者の長期経過
    第10章 惨事ストレス
    第11章 PTSDと前頭前野
    第12章 PTSDに対するSSRIの効果
    第13章 精神療法はトラウマ記憶をどう処理できるか
    第14章 暴力的死別による複雑性悲嘆の認知行動療法
    第15章 「蘇った記憶」と「偽りの記憶」をめぐる論争
    第16章 心的外傷はいかにして解離現象をもたらすか