中谷陽二編

責任能力の現在
法と精神医学の交錯

A5判 304頁 定価(本体4,200円+税) 2009年5月刊


ISBN978-4-7724-1078-6

 精神鑑定とは,ひとつの具体的な事例をめぐり,法と精神医学という専門領域が接する機会である。そこでは,責任能力の有無が問題となり,法律家にとっても精神科医にとっても当惑や葛藤を招く場となる。刑法の規定によれば,第39条「心神喪失者の行為は,罰しない。心神耗弱者の行為は,その刑を減軽する」とあるが,その判断は容易にできるものではない。
 本書は,2005年に施行された「医療観察法」,また2009年から始まる裁判員制度と連動して,多くの人々の関心を集める犯罪者の責任能力問題について,〈責任能力の根本問題〉〈責任能力と精神鑑定〉〈裁判員制度・医療観察法〉〈人権・保安・処遇〉〈訴訟能力・死刑適応能力〉〈海外の動向〉という6つのトピックについて,法と精神医学双方の論客が,国内外の判例を引きながら,歴史と現状を分析し,最新の論考を展開する。
 現代司法精神医学の一大論争点である“責任能力”論研究の到達点を示すものである。

おもな目次

    〈責任能力の根本問題〉

      責任無能力制度の将来:中谷 陽二 「精神の障害」と法律的病気概念:安田 拓人
    精神鑑定と刑法39条の乱用:井原 裕

    〈責任能力と精神鑑定〉

      わが国の責任能力判定の行方:吉川 和男
      起訴前簡易鑑定における責任能力評価:平田 豊明

    〈裁判員制度・医療観察法〉

      裁判員制度と刑事責任能力鑑定:五十嵐 禎人
      刑事責任能力と裁判員制度:岡田 幸之
    医療観察法鑑定――司法の立場から:鈴木 秀行

    〈人権・保安・処遇〉

      医療への保安的要請と責任能力:前田 雅英
      精神障害者の人権と刑事責任:川本 哲郎
      少年犯罪――処遇と責任能力:奥村 雄介

    〈訴訟能力・死刑適応能力〉

      刑事裁判と訴訟能力:北潟谷 仁
      死刑適応能力および再審請求能力が問われた事例:中島 直

    〈海外の動向〉

      アメリカにおけるInsanity Defense――合憲性の問題を中心に:横藤田 誠
      ドイツにおける責任能力鑑定と触法精神障害者の処遇――人格障害者対策を中心に:山中 友理